家を売りたい! 不動産売却の手順と注意点
一生のうちで最大の買い物となることの多いマイホーム。逆に売りに出して最大の売り物となる場合もあるでしょう。あまり経験することではないので、いろいろ不安な点も多いかと思います。今回は不動産売却の基本的な流れと注意点について考えてみましょう。
事情は千差万別、適切な対応を
不動産を売却する理由は人それぞれ。子供が成長して広い家に住み替える場合や、二世帯住宅に移り住む場合、あるいは定年退職に伴いセカンドライフを送る新しい住まいを買い換えるなど、ライフステージに応じて計画的に売却を進めることもあれば、債務の返済がうまくいかないといった状況や相続、離婚など必要に迫られて住まいを売りに出す場合もあります。それぞれの状況に応じて対処法や有利に売却を進めるプロセスも異なってきますが、いずれの場合も不動産売却は一般の人が何度も経験することではなく、実際に行う場合はケースバイケースでの対応が現実的です。ここでは一般的に行われている基本的な流れの説明にとどめますので、実際の取引、特に法律や税金などに関しては専門家へ相談するようにしてください。
多くの情報を得よう
以下は一般的な不動産売却の流れです。
- 1.目的の不動産の相場を知る
- 所有する不動産を売却すると決めたら、まずその相場感を知ることから始めましょう。不動産情報誌やインターネットで目的の不動産が存在する近隣で同じような物件がどの程度の価格で売りに出されているかを把握し、売却価格の目安を立てます。
- 2.不動産会社を選び査定を依頼する
- 通常不動産を売却する際、独力で行うのは困難で不動産会社に依頼することが必要になります。前述の不動産相場を調べるように不動産会社もいろいろな情報を元に慎重に選びましょう。複数の会社に打診してその対応を吟味してみることが大切です。また、売却したい不動産の査定をしてもらうことになりますが、ここでも複数の会社に査定してもらうようにしましょう。
不動産に相場はない?
ここで注意して頂きたい点があります。不動産の場合その流通性の難しさ(頻繁に売買がされない)や、物件の価格(総じて高額である)などにより、他の商品や財と異なり、決まった相場というものは存在しないということです。もちろん大体の価格帯というものはありますが、売買が締結したらそれが正解の価格なのです。プロの不動産鑑定士でも、10人いれば10人とも全く異なった価格をつけることは珍しくありません。ですので、売主買主の双方が納得するまで吟味する、そのためにも複数の専門家の意見を聞くことが大切です。
また、不動産会社に売却を依頼する場合、不動産会社が売主と買主の中を取り持つ「仲介」と、不動産会社自身が買主となる「買取」の二つがあります。後者の買取の場合、不動産会社が直接物件を買い取るため、広告宣伝費や仲介手数料が不要で、そもそも買主を探す必要がないため、取引がスムーズに進みます。その反面、買取価格は総じて低くなる傾向にあります。以下は不動産会社が媒介となって広く買主を募る「仲介」を想定してご説明します。
信頼できる専門家との連携を
では売却の流れの話を続けます。
- 3.不動産会社に仲介を依頼する
- 不動産会社へ売買の仲介を正式に依頼し媒介契約を結びます。媒介契約には、業者に依頼する際に与える権限の度合いによって「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3つの形態があります。
- 4.不動産を売りに出し、希望者と交渉する
- 希望する売却価格のほかに、不動産会社の査定価格や意見、周辺の売却事例、市場の動向を参考にして売却価格を決めたら売りに出します。そして購入希望者が現れたら、売却条件を交渉します。価格以外の条件についても、十分に検討して交渉を進めます。
- 5.物件情報を開示する
- 売買契約を結ぶ前に、物件に関する情報を正確に購入希望者へ提供します。物件に不具合や欠陥などがある場合には、誠実に購入希望者に伝えることが大切です。また、仲介の場合は「重要事項説明」という制度に基づく詳細な物件説明を不動産会社が行うことが義務付けられていますので、不動産会社 の物件調査に協力します。
- 6.売買契約を結ぶ
- 売買条件に合意できたら、買い主と売買契約を結びます。一般的にはこの売買契約締結時に物件価格の10〜20%程度の手付金契約金を受け取ることになります。手付金の授受後、契約の履行をする前に一方の気が変わって売買契約を「ナシ」とする場合は、買主は手付金を放棄、売主は倍返し、つまり手付金の2倍の金額を買主に支払うことになります。
- 7.不動産を引き渡す
- 売買が成立し実際に物件の引き渡しをする際は、売買代金の受領と同時に登記を行います。そのほか住まいにまつわる設備や備品等の取り扱いなどについても、後々トラブルにならないように買い主と現地立ち会いを行った上で十分に確認するようにします。不動産の売却には種々の税務にまつわる手続きも必要になりますので、専門家のアドバイスを請いながら遺漏のないように進めます。
不動産の売却はそれぞれの状況や物件といった個別のケースに応じた適切な処理と対応が大切で、前述したことは判断基準等を断定的に述べたものでは ありません。情報を客観的に吟味して専門家の意見を参考にしながら、最良の判断をするよう心がけましょう。