日本で初めてマイナス金利が導入されました。これにより住宅ローンが下がり住宅購入に追い風が吹くともいわれています。

お金を借りて利息がもらえる！？

今年1月29日の日銀金融政策決定会合でマイナス金利を導入することが打ち出され、2月16日からスタートしました。

マイナス金利とは文字通り金利がマイナスになることです。私たちが銀行にお金を預けて利息を受け取るように、民間の銀行も日本銀行にお金を預け利息を受け取ります。しかし、今回のマイナス金利導入で、銀行は日銀にお金を預けると逆に利息に当たる分を手数料として日銀に支払わなければならな くなるのです（※民間銀行が日銀に預けているすべてのお金が対象になるわけでありません）。今回、日銀が決定したマイナス金利は▲0.1％で、例えば100万円を1年間預けたとしたら、通常であれば100万円に利息分がつくところ、金利分の0.1％、つまり1000円分がマイナスされてし まうことになります。

なぜこのようなことをするのでしょうか？それは民間の銀行が日銀にお金を預けずに、新たにお金を民間企業や一般の人々に貸し出し、経済全体を活性化させるという狙いがあるためです。日銀はもともと民間銀行を通じて市中に回るお金をコントロールするという役目があります。お金は人間の体に例えれば血液。経済が停滞している場合は世の中に出回るお金を増やすために金利を低くすることで、企業や人々がお金を借りやすい状態にします。そしてさまざまな活動にお金を使うことによって経済を活性化させます。逆に経済が過熱している場合は、金利を上げて行き過ぎた血のめぐり（お金の流 れ）を抑制します。

日本では長く低金利の時代が続きましたが、金利をマイナスにするというのは初めてのこと。これにより日銀にお金を預けていては損をしてしまう民間の銀行が、懸命に融資先を開拓し、資金を得た企業や一般の人々が新たな生産活動や消費をして経済を盛り上げていこうとするものです。世界的に目を向けると、マイナス金利を導入した実績のある国はヨーロッパを中心にいくつかあります。デンマークではマイナス金利を導入したことで、住宅ローンで住まいを買った人が逆に利息分のお金をもらえることになるという珍現象まで起こりました。それでは住宅ローンについて見てみましょう。

住宅ローンへの影響

マイナス金利は日銀と銀行との間の金利ですが、他のさまざまな金利にも影響を及ぼします。特に注目すべきは、長期金利の指標となる10年物国債の利回りです。長期金利は住宅ローンの金利にも大きな影響を与えますが、今回のマイナス金利導入によって長期金利が下がり、それに伴い住宅ローンも 下がることが見込まれています。実際、3大メガバンクの10年固定型の住宅ローンはそれまで1.05％だったのが、1月の日銀金融政策会合でのマイナス金利の発表やそれに続く2月の実施と前後して、各行とも1％を割り込む低水準となりました。変動金利でも今後影響があるものと考えられています。住宅ローンが下がることはこれから住宅を購入しようと検討している方はもちろん、現在ローンを組んでいる方も借り換えなど有利な環境になることは確かなことでしょう。ただ、マイナス金利を導入する前からかなりの低水準にあったため、その効果は限定的とする考えもあります。各銀行とも競争して低い金利の住宅ローンを打ち出していますが、あまりに低いと銀行の経営にも支障がでかねず、実際マイナス金利を導入したスイスでは、収益 が悪化し、その補填のために逆に住宅ローンの金利を上げたということも起こりました。ちなみに先に述べたデンマークのように住宅ローンを組んで金利分のお金を受け取るということが日本で起こる可能性は極めて低いといわれています。

マイナス金利は諸刃の剣？

その他、ヨーロッパではマイナス金利を導入したことにより年金の運用収益も悪化し、将来の年金支給が懸念されるという事態に陥ったこともありました。これは他人事ではありません。日本の年金は、日本の国債などで比較的安定な運用を行ってきました。しかしマイナス金利によって国債の金利が低下すれば、当初予定していた運用益が期待できなくなってしまいます。株式などハイリスクハイリターンの投資をすることもできますが、株価が下がれ ば大きな損失を被る可能性もあります。また、身近なところでは、マイナス金利が長期化すれば、銀行が収益改善のためにATMの手数料や振込手数料 を上げる可能性があることが指摘されています。そして不動産に関しては、金利低下を機に住宅を購入しようとする人が増え、市場原理に従って住宅の価格が上がるという状況になる可能性もありま す。その場合住宅ローンの金利が低くなっても物件の価格が高くなってしまうことにもなりかねません。
我が国初めて政策となるマイナス金利ですが、諸刃の剣であることも注意すべきでしょう。



しかし、将来的にはデフレから脱却しインフレ率がプラスになってくると考えられています。そうした動向にあって、住宅ローンに関しては今回のマイ ナス金利が追い風になることは間違いないでしょう。新たにローンを組もうとお考えの方、借り換えをご検討の方は、金融機関によって条件が異なりま すので、一度お問い合わせすることをおすすめします。