賃貸物件の原状回復



賃貸住宅の退去時に、知っているととても役立つ「原状回復義務」。物件を借りる前の状態に戻すのが前提となりますが、これについてしばし問題となることがあります。多くの場合は「敷金を返還する、しない」という形で生じるものですが、借主・貸主ともにトラブルから回避できるよう、予防策について見てみましょう。



原状回復とは


建物賃貸借契約では、契約終了後に借主が物件を「現状に回復して」貸主に返すことを定めるのが一般的です。入居するときに家賃の1~3ヶ月分を敷金として納め、特に部屋を汚したり傷つけたりしなければそのまま返還されるというパターンが多いのですが、中には返還されなかったり、「原状回復」として追加請求されてトラブルになることがあります。
「原状回復」とは、借主が故意や過失によって対象物件が劣化した部分を回復することで、通常に使用し時間と共にした消耗した部分は原状回復の範囲には入らないとされています。
しかし、それでも原状回復をめぐって貸主・借主のトラブルが多いため、平成5年国土交通省(当時の旧建設省)による「賃貸住宅標準契約書」を始めとして、平成23年原状回復に関するガイドラインの一層の具体化・手順の明確化を行いました。
ガイドラインでは、原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の範囲を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義され、賃貸契約が開始された当時の状態に戻すものではないということがあらためて明確にされました。
一方で借主は賃貸物件を善良な管理者としての注意を払って使用しなければなりません。これを「賃借人の善管注意義務」といいます。日ごろの清掃や、退去時の清掃は借主の善管注意義務の範囲に含まれるとされます。



借主負担?貸主負担?


それでは国土交通省のガイドラインをもとに、借主・貸主の負担の範囲について、主な具体例を見てみましょう。

○床(畳、フローリング、 カーペットなど)

〔貸主負担〕
畳の裏返し、表替え(特に破損などしていないが、次の入居者確保のために行うもの)
フローリングワックスがけ
家具の設置による床、カーペットの凹み、設置跡
畳の変色、フローリングの色落ち(日照、建物構造欠陥による雨漏りなどで発生したもの)

〔借主負担〕
カーペットに飲み物などをこぼしたことによるシミ、カビ
冷蔵庫下のサビ跡
引越作業で生じたひっかきキズ
畳やフローリングの色落ち(賃借人の不注意で雨が吹き込んだことなどによるもの)
落書きなどの故意による毀損


○壁、天井(クロスなど)

〔貸主負担〕
テレビ、冷蔵庫などの後部壁面の黒ずみ(いわゆる電気ヤケ)
壁に貼ったポスターや絵画の跡
エアコン(賃借人所有)設置による壁のビス穴、跡
クロスの変色(日照などの自然現象によるもの)
壁などの画びょう、ビンなどの穴(下地ボードの張替えは不要な程度のもの)


〔借主負担〕
台所の油汚れ
結露を放置したことにより拡大したカビ、シミ
タバコなどのヤ二・臭い
壁などのくぎ穴、ネジ穴(重量物をかけるためにあけたもので、下地ボードの張替が必要な程度のもの)
クーラー(賃貸人所有)から水漏れし、賃借人が放置したため壁が腐食
天井に直接つけた照明器具の跡
落書きなどの故意による毀損


○建具(襖、柱など)

〔貸主負担〕
網戸の張替え(破損などはしていないが次の入居者確保のために行うもの)
地震で破損したガラス
網入りガラスの亀裂(構造により自然に発生したもの)

〔借主負担〕
飼育ペットによる柱などのキズ・臭い
落書きなどの故意による毀損


○設備、その他(鍵など)

〔貸主負担〕
全体のハウスクリーニング(専門業者による)
エアコンの内部洗浄
消毒(台所、トイレ)
浴槽、風呂釜などの取替え(破損などはしていないが、次の入居者確保のため行うもの)
鍵の取替え(破損、鍵紛失のない場合)
設備機器の故障、使用不能(機器の寿命によるもの)

〔借主負担〕
ガスコンロ置き場、換気扇などの油汚れ、すす
風呂、トイレ、洗面台の水垢、カビなど 
日常の不適切な手入れもしくは用法違反による設備の毀損
鍵の紛失、破損による取替え
戸建賃貸住宅の庭に生い茂った雑草



基本は「大切に使うこと」


よく契約書に「賃借人は原状回復をして明け渡しをしなければならない」と書いてあるため、退去時に内装をすべて新しくする費用まで負担しなければならない、と解釈されてトラブルになるいことが多いのですが、賃貸借での原状回復とは、既に述べたように借主が入居した時の状態に住まいの状態を戻すという意味ではありません。判例や学説でも、「借主が賃借物を契約により定められた方法に従って使用し、かつ、社会通念上通常の使用方法により使用していた状態であれば、使用開始時の状態よりも悪くなっていたとしてもそのまま賃貸人に返還すればよい」とされています。反対に借主の故意や不注意、通常でない使用方法などによって賃借物に汚損や破損などの損害が生じさせた場合は、その損害を賠償することになります。

つまり、借主が自分のモノと同じように大切に使った結果、時間の経過に伴って古くなった分については、借主の負担で原状回復させる義務はないということです。

原状回復については、契約書への明記のほか、貸主・借主双方が入居時・退去時に立ち会い、チェックリストを用いたり、必要に応じて写真を撮っておくなどして、物件の状況を把握することが大切です。







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