現場では当たり前? ちょっと気になる「家作りにまつわる言い伝え」その2



前回、日本にある多くの迷信の中には、生活に役立つ知恵や教訓を含んでいるものがあることを紹介しました。建築の世界にも、様ざまな慣習や言い伝えがあり、そのひとつが「風水(地勢や方位、地脈や陰陽の気などを考え、よい自然環境を求めようとする思想)」や「気学(古代中国の占術「九星(九星術)」を明治時代、園田真次郎がまとめたもの。方位の吉凶を知るために使われることが多い)」などを基にした「家相」です。これは建物を作る時、位置や部屋の間取り、方向に留意することで、居住者がより安心・安全に暮らせるようにとの意味が込められています。

また、建設現場においても、古くからのいろいろなしきたりや習慣があり、現在でも様ざまな式典が行われています。今回は現場に伝わる話にスポットを当ててみました。



先端技術の時代になっても、建設会社が欠かさない「建築儀礼」


高さ634m、世界一高いタワー「東京スカイツリー(東京都墨田区押上)」、地上300m、日本一の超高層ビル「あべのハルカス(大阪府大阪市阿倍野区)」に代表される大型建造物を建設してきた日本は、世界に誇る建築技術を有しています。また、土木工事、鉄道敷設の分野においても、最先端の技術国であるといえるでしょう。

あらゆる面で時代の先を行く日本の建設会社ですが、その一方、工事の節目節目で、古くから伝わる儀礼や式典を欠かすことはありません。目的は「安全成就」「永遠堅固」「(施主・依頼主などの)隆盛発展」などで、中でも、よく知られているのが「地鎮祭(ご祭神:大地主神、産土大神)」です。これは建築や土木などの工事着手前、関係者が集まって土地の神を祀り、敷地を清め祓い、永遠の加護、工事の無事進行、安全成就を祈願する祭儀。一般的には、整地をすませた土地に4本の青竹を立て、その間に注連縄を張り、榊を飾り、供物を供え、祝詞、お祓い、鍬入れ、玉串奉奠などを執り行います。なお、地鎮祭の歴史は古代から続いており、「古語拾遺(平安時代前期の歴史書)」「日本書紀(奈良時代の歴史書。六国史のひとつに数えられる)」「続日本紀(文武1 (697年)年~延暦10 (791年)年までの編年体の正史。六国史のひとつ)」に地鎮祭の記録がありますが、最も確かで古い文献は「日本書紀」だそうです。

日本最大の前方後円墳「仁徳天皇陵」、飛鳥時代に建てられた、世界最古の木造建築「法隆寺」といった建造物を建てる際、単純な道具や機器しかない中で、職人たちは高い場所に登ったり、大きな石を動かしたと考えられます。事故が起こることもあったでしょう。それだけに工事の前、安全を神に祈願したのは想像に難くありません。


なお、工事に際しての式典としては、他に工事着手時に行う「起工式(ご祭神は手置帆負命、彦狭知命、産土大神)」、工事の安全を祈願する「安全祈願祭」などがあり、これらは「建築儀礼」と呼ばれています。



トンネル工事に女性が携われなかった「理由」


日本には、「女性は相撲の土俵に上がれない」「一部の霊山への登山は禁止」といった『女人禁制』といわれる慣習が残っています。歴史的な背景もあり、一概に良い悪いとはいえませんが、土木工事の現場にも、長く「女性はトンネル(坑内)工事の現場に入れない」というしきたりがありました。その理由は、「山の神は女神なので、(女性が入ると)嫉妬し事故が起こる」からだそうで、実際、2006年(平成18年)の労働基準法改正により、現場監督など「技術者」の就業規制が緩和されるまで、女性はトンネル工事に携われませんでした。

とはいえ、「妊娠中の女性、および坑内で行われる業務に従事しない旨を使用者に申し出た産後1年を経過しない女性」の坑内業務は禁止されています。また、女性は掘削業務といった仕事もできません。このことから、工事の無事を祈って験を担いだ事に加え、男性でも危険が伴う作業だけに、体力面で劣る女性には向かない仕事だとも考えられたのでしょう。ただ、トンネル工事に従事する女性たちは、作業を担う「技能者」についても坑内労働が可能になるように働きかけています。山の女神様も強いですが、人間の女性も負けていないようです。



大工さんに伝わる不思議な言い伝え


現場の安全を第一に考える、大工の棟梁や職人さんの間にも、様ざまな「禁忌」が伝わっていると聞きます。昔、仕事前にみんなで食事をとっていると、若い鳶職人がご飯に味噌汁をかけて食べ始めました。それを見た先輩職人は彼を殴り、周囲の者は「本日の仕事は休みだ」と言い出します。その理由は、ご飯に味噌汁をかけるのは鳶職人にとっては「やってはいけないこと」で、「味噌汁の具が落ちる」=「身が落ちる」、つまり「事故につながる」縁起の悪い行いだったからです。

建設会社の社長は「日が悪い」と工事を中止しようとします。しかし、工期が迫っていたため、社長の息子は「依頼先は迷信など許さないと」、社長に内緒でベテラン職人と工事を行ったのです。仕事は無事に終わりましたが、社長の息子は足場から転落。亡くなってしまったそうです。社長は職人を責めることなく、「現場に出た息子が悪い。それ以上に味噌汁をご飯にかけて食べた職人を雇っていたら、この先も悪い事がある」と、その男を辞めさせたといいます。

また、鳶職人の間には、「現場で子どもを見たら、怪我をしたり、落ちたりするので、絶対に仕事をしてはならない」という言い伝えもあるそうです。明確な理由はわかりませんでしたが、「着手して日の浅い、(骨組みや足場しかない)建物現場に子供がいるわけがない」、つまり「いるはずのないものを見る」ことに不吉な感じを覚えるのではないでしょうか。加えて鳶職人さんは、高い所で作業するわけですから危険がつきもの。他の職種以上、縁起を担ぐのも当然だと思われます。

科学が発達して、怪力乱神を語らない時代になりましたが、良い年を祈願する「初詣」という習慣は続いています。安全第一の業界だからこそ、参詣や参拝同様、不吉なことは少しでも避けたいという気持ちが「しきたり」として伝えられ、信じられているのでしょう。





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