冷房や扇風機のなかった時代、暑さしのぎの決め手は怪談?



梅雨があけると夏もいよいよ本番。3ヵ月予報(6~8月)によると、今年の夏は「全国的に暖かい空気に覆われやすく、盛夏期には太平洋高気圧が本州付近に張り出しやすいでしょう」とのこと。気温も全国的に高いと発表されています。

とはいうものの、住居や各施設ではエアコンや扇風機をはじめ、暑さを払う夏物家電が使われ、冷蔵庫にはのどを潤す冷たい物が常備されています。ですから外に出ない限り、室内では快適に過ごすことができるわけです。

今でこそ、猛暑を乗り切る数多くの機器やシステムが本格的に普及していますが、それを動かす電気がなかった時代、人々は夏の暑さをどのようにしのいでいたのでしょうか?



夏の風物詩「怪談」で肝までひんやり


戦国乱世が終わり、庶民の暮らしが落ち着いた江戸時代、人々は打ち水をしたり、よしずを組んだりしながら、暑い夏を涼しく過ごす工夫をしていました。また井戸水でスイカを冷して食べる、金魚鑑賞なども暑さ対策の定番。加えて怪談も暑気払いとして庶民の間に広まっていました。その代表は、今も上演されている夏季の「納涼歌舞伎」でしょう。ここでの演目は、「牡丹燈籠」「四谷怪談」「番長皿屋敷」といった怪談物が主流となっています。

どうして歌舞伎で怪談が上演されるようになったのかというと、それは夏の暑さが原因でした。冷房設備のない芝居小屋はとても暑いため、夏は客入りが悪く、興行主は集客に頭を悩ませていました。有名役者の中には休暇をとる者もいたそうです。そこで、思いついたのが怪談物の上演。肝を冷やす筋立てに、本水(涼しさを演出するため、芝居で使う水)や早変わり、宙乗りを用いた「外連味(大道具、小道具の仕掛けを使い、観客を驚かせるような演出)」ある怪談物は人気を博し、夏の風物詩となっていったのです。

また「百物語」という怪談会も行われました。これは新月の夜に人々が集まって怪談話をし、終わったら用意した100本の蝋燭を1本ずつ消していくというもの。そして100話目が終わり、最後の蝋燭が消えると怪異が起こるといわれています。何となく肝試しのような催しにも思えますが、大正時代には泉鏡花を中心に、柳田國男、芥川龍之介といった文人墨客が百物語の会を行っていたそうです。



家の中にも妖怪が? 部屋のあちこちで起こる怪異の数かず


街頭や照明のなかった時代は、夜になると街は真っ暗。室内では蝋燭や行灯で明かりをとっていましたが、手元やちょっと先が見える程度にしか過ぎません。そのような状況ですから、夜の闇の中には「何かが潜んでいる」と考える人も多かったようです。そのひとつが「妖怪」だといえます。実際、当時の書物の中には、妖怪を記したものが少なくありません。稀代の浮世絵師・葛飾北斎をはじめとする絵師、戯作者(当時の小説家)、ひいては南町奉行(根岸鎮衛「耳袋」)までが、怪しい絵、奇談や怪異譚を書き残しています。中でも江戸中期に活躍した鳥山石燕は、「画図百鬼夜行」をはじめ、「今昔画図続百鬼」「今昔百鬼拾遺」「百器徒然袋」という妖怪画集を刊行したことで有名な絵師。そこに描かれた個性豊かな妖怪は、妖怪研究の大家・漫画家の水木しげる氏ほか、後世の芸術家・作家・クリエイターらに影響を与えています。

石燕の妖怪画集で印象的なのは、「家の中に住む? 現れる妖怪」がいることです。河童にしろ、ひとつ目小僧にしろ、一般的な妖怪といえば「家の外」に出没することが多いといえます。しかし、石燕の妖怪は、たとえば長い舌で風呂垢を舐める「垢なめ」をはじめ、トイレの中を覗き込む「頑張入道」、天井を舐めてシミを作る「天井なめ」、洗濯物や蚊帳を切ってしまう「網剪」、真夜中に家を揺らしてきしませる「鳴屋(やなり)」など、家の中であれこれと怪異を起こす迷惑な連中です。さらに夕方になるとどこからともなくやってきて、人の家で茶を飲み、煙草を吸う「ぬらりひょん」は、一体何のために現れるのか不明な存在でありながら、「妖怪の総大将(?)」とされています。



家に出る妖怪たちの正体とは!?


家を騒がせる妖怪の中には、教訓的な意味を持っているとされるものがいます。たとえば風呂場に出没する「垢なめ」は、「風呂場や風呂桶の掃除をしないと垢なめが出てくる。だから綺麗にしておけ」という戒めが含まれているという説があるそうです。これは「腹を出して寝ると、雷様にへそを取られる(寝冷えをするから気を付けろ)」「嘘をつくと閻魔様に舌を抜かれる(嘘はついてはいけない)」といった言い伝えと同じだといえます。

また「鳴屋」=家鳴りの正体は「新築時の家に起きやすい現象である」と建築的な見地から証明されています。新築間もない家は建材同士が馴染んでいないため、木材が収縮や移動してしまい、その時に音を立てるのだそうです。ゆっくりと乾燥させた建材は収縮率も低く、あまり音を立てることがないのですが、乾燥が十分でない(急激乾燥させた)場合は収縮率が高くなるため、音の出る確率が高くなります。そのため、家鳴りは時間の経過に比例して、だんだん少なくなっていきます。昔の人は原因がわからないこともあり、これらの現象を怪異や妖怪と結びつけたのでしょう。

妖怪の本当の姿が少なからず見えてきた現在でも、夏になると怪談納涼歌舞伎、怪談落語がかけられ、テレビではオカルト系のバラエティー番組が放映されるなど、怪談で暑気払いをする習慣は変わらないようです。今年の夏はエアコンや扇風機を忘れ、うちわを片手に怪談を楽しんでみませんか。






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