元は防寒防熱用? 知っているようで知らない「カーテン」アラカルト
「カーテン」というと、窓に吊るして(を覆って)日差しや寒気などを防ぐ布というイメージが一般的です。実のところ他の家具調度品に比べると、それほど重視されない傾向もあるようで、特にひとり暮らしの若い世代になると、「開けっ放し、または閉めっぱなしで、長期間カーテンを放置している」という人も少なくありません。
しかしカーテンは光や・音などを遮断するだけでなく、部屋を仕切る、装飾するといった、様ざまな機能を兼ね備えているのです。
今回は、そんなカーテンの歴史から活用法まで、いろいろ調べてみました。
カーテンは住居の出入り口から始まった?
ほとんどの戸建てや集合住宅には窓があり、そこにはカーテンがかかっています。中には「吊るしたり、洗ったりするのが面倒くさいので、まったく使わない」人もいるようですが、そのようなタイプは少数派だといえるでしょう。ただカーテンには、遮光や室内温度の調節をはじめ、部屋の装飾、部屋の間仕切りほか、あらゆる機能を有しているのです。それには、カーテンの歴史も関係しているといえます。
では、毎日何気なく使っているカーテンは、いつ頃から使われるようになったのでしょうか? 諸説あり、確実なことはわからないようですが、古代人たちが洞窟を利用した住居の出入り口に獣皮などを吊り下げて、暑さや寒さをしのいだのが原型だと考えられているそうです。
また古代エジプト時代、王や貴族たちがベッド(寝床)の周囲を布で覆ったことも、カーテンのルーツだといわれています。その目的は「プライバシーを守り、安らぎの場を作るため」で、現在でいう「天蓋付ベッド」のようなものだったのでしょう。ちなみにカーテンの語源はラテン語の「cortina(コルティナ)」だといわれ、「覆い」の意味を持っています。この言葉が後にイギリスへ渡った際、「カーテン」に転じたのだそうです。
ベッドを覆うために使われていた布が、仕切りや室内の装飾にも転用されるようになったのは、当時の絵画などに描かれていることからローマ時代だと伝えられています。これが窓に転用されるのは、ガラス窓が登場したルネッサンス(14世紀~16世紀、ヨーロッパ各地に広がった革新的な文化運動)時代。ただし、ガラスはとても高価なものだったので、使えるのは一部の富豪(フィレンツェのメディチ家邸宅が最初だと考えられている)のみでした。このガラス窓を引き立てるために、装飾品として扱われるようになったのが、現在の「カーテン」なのだそうです。
カーテンは上流階級のステイタス
その後、ガラス窓を美しく装うカーテンは、富裕層のステイタスとして扱われるようになりました。17~18世紀になると、華麗な金糸・銀糸によって、草花や風景といったモチーフを織り込んだカーテンが登場。19世紀に入ると、窓辺をさらに美しく優雅に彩る「スワッグバランス(カーテンの上飾り。カーテン上部に複数の襞を作るスタイル)」が用いられるようになり、これは現在のカーテンスタイルの原型ともいわれています。
日本にカーテンが上陸したのは江戸時代初期で、長崎の出島にあった外国公館で使ったのが始まりだと伝わっています。当時は「窓掛け当時は「窓掛け(窓掛とも)」と呼ばれ、輸入品いうことも手伝って、とても高価なものでした。しかし、平安時代にはすでに間地切りや目隠し、また寒さをしのぐための「御簾や御簾(竹製のすだれ。材料によっては呼び名が変わる)」、母屋と庇との間を隔てるため、長押から垂らした「壁代(綾や絹の織物)」などが使用されていました。用途や目的を考えると、これらは日本のカーテンの原点ともいえるでしょう。
いわゆるカーテンが日本で普及し始めたのは、江戸時代末期から明治時代にかけてのことです。当初は輸入品のため、最初のうちは上流階級が利用するのみでしたが、やがて国内生産が始まります。そのため中産階級が増えた大正時代には、カーテンも次第に広まっていきました。今のようにカーテンが一般的になるのは昭和30年代以降のことです。高度成長期をきっかけに住宅産業が盛んになり、それに伴いカーテンの利用も増加していきました。
目的・用途に応じてカーテンを使い分け
現在、カーテンは様ざまな用途によって使い分けられ、様ざまな機能が付加されています。
○カーテンに搭載されている主な機能
●遮光性:カーテンを閉めた状態で、外光を遮断する。特に遮光性が高いものを「遮光カーテン」と呼ぶことも。
●透過性:昼間、窓を外から見た時、室内のプライバシーを守る。
●UVカット:室内に入る紫外線をシャットアウトする。
●ウォッシャブル:家庭で洗濯(洗濯ネット使用)できる。
●防炎性:火がついても燃えにくい。
●遮熱性:室内に入り込む熱を防ぐ。
●保温性:冬場など、室温を逃がさない。
●撥水性:水に強い。結露を防ぎ、カビなどが発生しにくい。
●防音性:音が周辺に漏れないようにする。
一戸建てはもちろんですが、マンションやアパートにおいても、カーテンを変えるだけで生活が快適になることも少なくありません。気になる点があるなら、まずカーテンから考えてみてはいかがでしょう。