「住宅診断制度」と「改正宅地建物取引業法」



「住宅診断制度」をご存知でしょうか? このところ住宅・リフォーム業界で普及している取り組みではありますが、比較的新しい制度のため、「言葉自体知らない」「聞いたことはあるが、内容はよくわからない」という声も少なくないようです。これは簡単にいうと、一戸建て、マンションなど、売買をしようとする住宅(建物)を専門家が客観的に診断し、建物の品質や様子、状況を明らかにするもの。これにより、「安全な建物であるかどうか」がわかるので、購入後のトラブルが緩和されると期待されています。



「住宅診断制度」とは何か?


たとえば中古住宅を買う場合、購入希望者は様ざまな情報を元に物件を探すと思います。不動産会社、ハウスメーカーのホームページはもとより、今はインターネットを使うことで、口コミやSNSなど、公式ページには出てこないような「ホンネの裏情報(玉石混交ではありますが)」も知ることができます。

これらを総合して物件を決め、売買契約を結ぶわけです。しかし、ようやく見つけたマイホームと思いきや、中には購入後、「見えないところに瑕疵があるなんてわからなかった……」「細かい劣化に気がつかなかった……」といった問題が起こることがあります。常にメンテナンスをしている、売買に際してきちんとリフォームされている物件は別ですが、たとえば「全体的に綺麗だが基礎が劣化している」「高いところが風化したまま」の物件の詳細は、外からではなかなか把握できません。

このようなトラブルを防ぐには、「住宅診断制度」が効果的です。取り扱う企業、会社によって、「ホームインスペクション」「ハウスインスペクション」(インスペクションは英語で検査・視察・査察の意味)、また「住宅検査」「建物調査」と呼ばれることもあり、新築、中古にかかわらず行われています。そのメリットを見てみましょう。

◇住宅診断制度の主なメリット

〈購入者(居住者)のメリット〉
・専門家が診断することで、安心して購入・居住することができる。
・購入する前に「欠陥住宅」を避けることが可能。
・購入前に住宅の修繕箇所や改善点がわかる。
・専門家が公平・中立な立場で診断を行うため、補修などの対応や説明に対し、売り主側との確執が起きにくい。
・住宅診断の報告書は、住宅の資産価値を保つために利用可能。

〈売り主、不動産仲介業者のメリット〉
・住宅の正しい状態を明確にして、買い主に情報提供することができる。
・売却後の不具合など、買い主とのトラブルを未然に防ぐことが可能。

なお、住宅診断先進国のアメリカにおいては、州によって異なりますが、おおよそ70~90%の人が住宅購入前に住宅診断を行っているそうです。



住宅診断を行う「専門家」とは、どんな人?


現在、中古住宅(木造一戸建て、マンション)の状態を診断する専門家として、「ホームインスペクター」が活躍しています。これは「NPO法人日本ホームインスペクターズ協会(JSHI)」が認定している資格で、試験に合格すると建築・不動産取引・住宅診断方法などにおける一定以上の知識を有すると認められ、住宅診断をすることができます。なお、毎年1,000人以上の申し込みがあり、受験者は建築や不動産業の従事する人が中心となっています。

また、「ハウスインスペクター」と呼ばれる建築士、建築施工管理技士も住宅診断を行います。こちらは建築士(一級・二級・木造)、建築施工管理技士一級、建築施工管理技士二級で建築もしくは躯体・仕上げの両方を保持する人が、一般社団法人 全日本ハウスインスペクター協会の開催する「国土交通省の定める既存住宅インスペクションガイドラインに基づく研修」を受け、修了考査に合格するとライセンスが得られるというものです。

どちらに依頼しても診断が正しいものならば何も問題はなく、「ホームインスペクターに依頼してよかった」という個人の売り主、買い主、不動産会社も少なくありません。しかし、診断士が不正を行っていたらどうなるでしょうか? たとえば「物件をよく見せようと、瑕疵があっても見てみないふりをする」「意図的に物件の評価を下げる」など、診断・調査結果に手心を加えたとしたら、物件の本当の価値は伝わりません。そのため「施工業者と結託しているかもしれないので信頼しにくい」いった声もあり、住宅診断に消極的な人はまだまだいるようです。



「改正宅地建物取引業法」で住宅診断の精度はあがる?


去る5月27日(平成28年)、「宅地建物取引業法の一部を改正する法律案」(以下「改正宅地建物取引業法」)が国会にて可決成立されました。政府は「住宅ストックの有効活用」「既存住宅流通市場の拡大による経済効果の発現」などを目指し、「消費者が安心して既存住宅の取引を行える市場環境の整備を図る」(国土交通省報道発表資料)ため、近年「住宅診断を義務化する」法整備を進めており、それがいよいよ実現することになります。「改正宅地建物取引業法」の主な内容は以下の通りです。

(1)既存建物取引時の情報提供の充実
①媒介契約締結時にインスペクション業者のあっせんに関する事項を記載した書面の依頼者への交付
②重要事項説明時に買主等に対しインスペクションの結果の概要等を説明
③売買契約の成立時に建物の状況について当事者の双方が確認した事項を記載した書面の交付を宅建業者に義務付ける

(2)消費者利益の保護の強化と従業者の資質の向上
①営業保証金制度等による弁済の対象から宅地建物取引業者を除外
②事業者団体に対し、従業者への体系的な研修を実施する努力義務を賦課する

なおこの法律の施行期日は、(1)については公布の日から2年、(2)については、公布の日から1年となっており、確定次第告知されます。

「改正宅地建物取引業法」においては、不適切な診断が行われた場合、その事業者に対して建築士法に基づく処分を行う、また建築士による不正に目をつぶっていた宅建業者についても宅建業法にて処分することも検討されています。

「改正宅地建物取引業法」の診断規定は公布より2年以内、その他の規定は1年以内に施行にされます。詳細はこれから検討に入るため、具体的な内容が決まるのはもう少し先になるでしょう。売る人も買う人も、安心安全なやり取りができるような「住宅診断」をお願いしたいものですね。








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