先人が残した、「暑い夏を快適に過ごす理想の家」とは



まもなく夏が本番を迎えます。今年から新たな国民の祝日として、8月11日「山の日」が加わるため、遠出を考えている人も多くなることでしょう。お出かけの際に気になるのは、やはり天気。ですが、気象庁の3か月予報(6月24日。関東甲信地方)によると、7月前半は平年同様、曇りや雨の日が、後半は平年と同じく晴れの日が多いようです。続く8月も平年同様に晴れる日が多いとのこと。なお、この期間の平均気温が、例年よりも高くなる確率は50%だそうです。
行楽の晴天はありがたいですが、日常生活において夏の強い日差しは困りもの。そこで、主役となるのは「冷房(エアコン)」です。しかし、屋内の熱が冷房で排出されることにより、都市部において周辺地域に比べて気温が高くなる「ヒートアイランド現象」が生じるのは否めません。それを緩和するため、冷房の使用を抑え、涼しく過ごす方法があります。



日本の夏は昔から暑かった?


日本の夏はいわゆる「高温多湿」で、暑いことに加え、湿度が高いのが特徴です。そのため、外国から来た人は、その蒸し暑さに驚くこともあるといいます。かつては「30℃を超える」だけで「猛暑」「酷暑」と報道されていましたが、今や「30℃」なんて当たり前。35℃前後になる日もあります(ちなみに東京では、2010年から2012年にかけて、最高気温が30℃を超える真夏日が60~70日以上という異常気象が続いた)。毎年、猛暑が続くため、「夏バテ」や「熱中症」も問題になっており、その予防法としては、「日差しが特に強い日はなるべく外出を控える」「保冷剤や水に濡らしたタオルを首などに巻いて適度に冷やす」「スポーツドリンクなどで、こまめに水分を補給する」「熱帯夜にはエアコンをつけ、室内温度を28度以下に保つ」などが一般的です。

日本の夏が蒸し暑いのは、現代だけではなかったようです。その証拠に、鎌倉時代の随筆家である吉田兼好(兼好法師)が、日本三大随筆のひとつされる「徒然草」第五十五段の中で「家の作りやうは、夏をむねとすべし~暑き比(ころ)わろき住居(すまい)は、堪へがたき事なり(家を作るなら、夏を中心にしたほうがよい~暑いときに、過ごしにくい住まいは堪えがたい(意訳)」という一節を残しています。



夏の気候を基本とした家作り


兼好はさらに、夏を基本とした家作りにも言及しています。
「家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬はいかなる所にも住まる。暑き比(ころ)わろき住居(すまい)は、堪へがたき事なり。深き水は涼しげなし。浅くて流れたる、遥かにすずし。こまかなる物を見るに、遣戸は蔀(しとみ)の間よりも明し。天井の高きは、冬寒く、灯暗し。造作(ぞうさく)は、用なき所をつくりたる、見るも面白く、万(よろづ)の用にも立ちてよしとぞ、人の定めあひ侍りし」

現代語訳「家の建て方は、夏を中心に考えたほうがよい。冬はどんな所にも住める。しかし暑さをしのげない悪い住まいは、堪えがたい。深い水は涼しい感じがしないので、浅く流れるほうがずっと涼し気に見える。遣戸(引き戸。鴨井と敷居の間にはさみこむ戸)のある部屋は蔀(格子の裏に板を張り、引き上げれば釣り金具でとめられるようにした戸)のある部屋よりも明るい。天井高く作られた家は、冬寒く、灯が暗い。家の作りというものは、さして用のない所を作り込んでいるのが、見るにも面白く、万事、用にかなってよいと、人々が評定しあったそうだ(意訳あり)」

兼好の書きようから見ても、当時の夏は厳しい暑さだったと推察できますし、さらに住んでいたのが今でも「夏暑く、冬寒い」盆地気候の京都ですから、猛暑も珍しくなかったのでしょう。また、鎌倉期は世界的に見ても気温が高かった時期(800年~1300年頃。西暦1000年頃がピーク)だといわれており、気象学の世界では「中世温暖期」と呼ばれています。兼好の言葉をもっと今風にすれば、「冬の寒さは火や厚着でなんとかしのげるが、日本の夏の蒸し暑さはどうにも耐えられない。だから、住まい作りは、暑さ対策が基本である」ということなのでしょう。

実はこの「家作りは夏の気候が基本」は、それぞれの時代、住まいづくりを担う人(建築家や大工など)に、少なからず影響を与えています。特に冷房(エアコン)が一般化する以前、兼好の考え方は家屋を建てる基準のひとつだったのです。

日本の伝統的家屋は、土壁、漆喰壁、茅葺の屋根、木、紙、畳で作られています。これらは湿気を吸放湿する素材でもあるため、暑さだけでなく、湿度対策にも適していました。というのも、冷蔵庫が広く普及するまでは、湿度によるカビが原因となり、夏場は食中毒になる人が多かったからです。



先人の知恵に学んで涼しく過ごす


「ヒートアイランド現象」はもちろんのこと、「地球温暖化」によって、夏の暑さは年々厳しいものになっています。この状況を少しでも緩和していくためには、兼好のみならず、先人の知恵から学ぶことは少なくありません。「打ち水」をしたり、冷房を抑えて「よしず」や「網戸」で家に風を通す、風鈴や金魚鉢といった伝統的インテリア(?)で部屋に涼を運ぶなどの方法は、簡単に実践できます。快適に夏を過ごすためにも、今年はレトロな演出を考えてみませんか?








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