消費者を守る営業保証金



不動産取引では消費者保護の観点から営業保証金制度が設けられています。今回はその概要をご紹介します。



営業保証金とは


不動産取引は一回の取引金額でも取り交わされる金額が多く、また専門的知識が必要なことや法律的背景が複雑なため、何か支障が生じた際に思わぬトラブルに発展することがあります。そのため、一般消費者を保護する観点からさまざまな施策が施されています。たとえば以前このコラムでご紹介したように、不動産の広告では「最高!」といった言葉が使えないといった他の業種では見られないような規制があります。これも一般の人々を思わぬ誤解からトラブルに陥れないため、つまり消費者保護の考えから来ています。このように不動産の安全な取引を実現するために、宅地建物取引業者には強い規制が講じられていますが、実際に金銭的トラブルが生じた際にも被害を最小限に抑えるための措置が施されています。それが今回ご紹介する営業保証金制度です。

営業保証金制度は昭和32年に発足しました。この制度によって宅地建物取引業者が営業を開始するためには、不動産取引上で生じた債務について、その弁済を担保するために「営業保証金を供託しなければならないとされています。

供託とはある人が払わなければいけないお金を国が代わって預かっておく制度のことです。
金銭や有価証券などを国の機関である供託所に預け、最終的には供託所がその財産をある人に取得させることによって法律上の目的を達成しようとするために設けられている制度です。
宅地建物取引業者は、営業を開始する前に、予め法務局などの供託所に本店で1,000万円、支店ごとに500万円を預けます。これにより、万一不動産取引で事故が生じた場合に、損害相当額の金銭の還付を受けられるようになっています。
ちなみに不動産取引では営業保証金のほか、この供託の制度が家賃、地代の支払いに関して利用されることがあります。

例えば賃貸住宅において、貸主が家賃の値上げを申し出たとします。その金額が高かったため借主は納得できません。しかし、まったく家賃を払わなかったら借主はその義務を果たしたことになりません。そこで自分が納得する額、例えば今までどおりの家賃を払ったとします。すると今度は貸主は納得できず、受け取ってしまってはその金額を了承したことになり受け取りを拒否するとします。これでは家賃が宙に浮いてしまいます。

そこで、貸主の代わりに国が一旦家賃を受け取り、家賃の支払いは確かにあったことを証明し、貸主にもその連絡が届きます。国が預かっている間に、貸主と借主の間で家賃の交渉をするわけです。これは供託の中でも、弁済供託と呼ばれるものです。



弁済業務保証制度


新しく宅地建物取引業を興そうと考える会社は、本店だけでも1000万円を供託しなければならず、宅地建物取引業者にとってもその負担は小さくありません。そこで、営業保証金制度に代わるものとして、「弁済業務保証制度」というものがあります。この制度により、宅地建物取引業者は保証協会に加入してその社員となり、営業を開始する前に予め「弁済業務保証分担金」を供託します。これにより、不動産取引について消費者が損害を被った場合には営業保証金と同じく損害相当額の還付を受けることができます。弁済業務保証分担金は、本店で60万円、支店ごとで30万円となっており、営業保証金より少ない負担で業務を開始することができます。

保証協会とは不動産取引に関する苦情解決や弁済業務を行う公益社団法人で、全国組織からなる業界団体です。宅地建物取引業者は、営業保証金を供託しない場合は、この保証協会に加入することが義務付けられています。
保証協会が弁済する価額の限度は営業保証金によって弁済される価額の限度と同じですが、宅建業者が負担する分担金額は営業保証金よりも少ない額に設定されていいます。また、協会は納付された分担金に相当する額のお金を供託しなければなりません。



ウサギかハトか


保証協会には2種類あります。ひとつは「全国宅地建物取引業協会連合会」が運営母体となって設立された「全国宅地建物取引業保証協会」で、もうひとつは「全日本不動産協会」が運営母体となって設立された「不動産保証協会」です。前述の通りどちらも公益社団法人です。
全国宅地建物取引業保証協会はハトをモチーフにしたロゴマークを、不動産保証協会はうさぎのロゴが目印で、街の不動産屋さんの店頭でも、どちらかのマークをご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。

全国宅地建物取引業保証協会も不動産保証協会も都道府県ごとに支部を有しており、不動産無料相談所が開設されています。苦情解決業務だけでなく、不動産取引に関する幅広い相談を受け付けています。



このように多額のお金が動く不動産取引では以上のような制度で消費者の保護が図られています。しかし、宅地建物取引業者にとってはこれは最低限守らなければならないことのひとつに過ぎません。一般の人々に良い不動産取引をもたらしてくれるかどうかは、他の業界と同じく、その仕事に対する姿勢や資質に依ります。住まいの売買や賃貸に際しては、いくつかの宅建業者に接して信頼できる業者であるか判断するようにしましょう。








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