シニア世代の住まいの活用法としてマイホーム借上げ制度が注目されています。子どもが独立し夫婦で住むには現在の家が広すぎると感じるシニアの方がいる一方で、いい家を安く借りたいという若年層のニーズをマッチングさせるのに有効な制度です。今回はマイホーム借上げ制度についてご紹介します。

マイホーム借上げ制度とは

定年退職後にセカンドハウスに移住したり、子どもたちが独立し夫婦二人ではそれまで住んでいた家が広すぎ、新たに住まいを求めるといったシニア世代が増えています。そのような際、今まで住んでいた家の扱いに困ることがあります。いずれは子どもに相続させたいので売却はしがたい、賃貸に出すにもいろいろ面倒…。中古住宅の有効活用が求められる昨今、そういった住まいのオーナーと、質の高い家を安く借りたい若い世代のニーズを背景に利用されているのがマイホーム借上げ制度です。

マイホーム借上げ制度は一般社団法人「移住・住みかえ支援機構（以下、JTI）が提供しているサービスで、原則として50歳以上の人々の自宅を最長終身に渡ってJTIが借り上げ、賃貸住宅として第三者に対して貸し出すと同時に貸主に対しては安定した家賃収入を保証するという仕組みです。

これにより家の持ち主は自宅を売却することなく、住みかえや老後の資金として活用することができます。また、家を借りたい人にとっては敷金や礼金がないなど、優良な住宅をリーズナブルな家賃で借りることができます。シニア世代の家を有効に活用することによって、家を貸したい人と借りたい人の双方がメリットを享受することができます。

制度利用条件

マイホーム借上げ制度を利用するためには以下の条件があります。

・利用対象者
日本国内に住む50歳以上の方（国籍は問われません）。または海外に住む50歳以上の日本人の方。対象となる住宅が共有の場合は共有者全員の承諾が必要です。

・対象となる住宅
日本国内にある一般住宅で、建築基準法などの法規に適合していること。一戸建てだけでなくマンションなども対象となります。現在居住しているかは問われませんが、賃貸物件や事業用物件は原則として対象にはなりません。

・耐震性の確保
昭和56年5月31日の新耐震基準以前に建築された住宅については制度利用者の負担で耐震・劣化診断を受ける必要があり、診断の結果基準を満たす住宅に限ります。補修や改修が必要な場合は制度利用者の負担で工事を行います。

・入居者による交換・改修
建物の一部（壁紙等）について、入居者がJTIの承諾を得て交換・改修することを制度利用者があらかじめ了承する必要があります。

・手数用の負担
制度利用を申し込みするにあたり、手数料として17,000円（税別）の申込金を支払います。なお、審査の結果利用承諾されず契約に至らない場合でも返金されません。

期間と契約形態

借り上げる住宅は原則として3年間定期借家契約で入居者に転貸し、期限に再契約するという形式をとります。そして期間によって終身型と期間指定型の2つの契約形態があります。

・終身型
対象となる住宅に問題がない限り、利用者と共同生活者のどちらか一方の存命中は借上げが存続します（ただし、利用者が亡くなった時点で共同生活者が50歳に達していない場合、共同生活者が50歳に達するまでは家賃保証が受けられないことがあります）。入居者とは3年の定期借家契約でJTIが転貸する形態となり、転貸借契約期間が終わる6ヶ月前までに解約通知をすれば、入居者に退去してもらい住宅を返還してもらうことが可能になります。

・期間指定型
あらかじめ制度利用者が指定した期間借上げをする形態です。この場合は原則としてその期間中に中途解約することは認められません。「○○年後海外赴任から戻ってくる息子夫婦と同居するのでそれまでの間自宅を活用したい」といった場合に適しています。

家賃と家賃保証

家賃は転貸家賃から10％の空室積立金（空室時の保証積立金とJTIの運営費）と管理業者への管理手数料5%を差し引いた金額が制度利用者に支払われます。家賃は空室保証があることなどから、周辺相場より1割～2割低くなる傾向にあります。なお、入居者から敷金・礼金は取りません。家賃保証については最初の入居者が決定した時点からその対象となり、以後空室になっても入居者の再募集にあたり最低保証賃料（契約された転貸家賃-15％）が支払われます。ただし、最低保証賃料には127,500円という上限があります。


マイホーム借上げ制度は、貸主にとっては空室時でも安定した賃料収入を見込めることができ、終身に渡って貸し出すことも、あるいは3年ごとの契約見直しでマイホームに戻ることも可能です。また、貸し出しに当たっての煩雑な手続きはJTIが行い入居者と顔を合わせることもありません。借主にとっては耐震基準を満たした良質な住宅を敷金・礼金なしで相場より安く借りることのできるおトクな制度です。ご自身のライフプランに合わせて、マイホーム借上げ制度のご利用を検討なさってみてはいかがでしょうか。