家屋を守る様ざまなスプリンクラー



前回、高層マンションやその他の建築物には、立地条件や用途に応じて、様ざまなスプリンクラーが設置されていることを紹介しました。今回は、引き続き一戸建てのスプリンクラー、ドレンチャー設備なども調べていきたいと思います。



スプリンクラーは一戸建てにもつけられる!?


スプリンクラーとは、ビルをはじめとする建物の天井等に設けられ、火災が起こると自動的に散水して消火する消火設備のことです。初期消火には効果的で、火事が起きた場合、かなりの確率で消火に成功しているとのことです。

スプリンクラーと聞くと、デパートや劇場など、多くの人が集まる施設、タワーマンションをはじめとする高層物件に設置されてはいるもので、低層ビル、一戸建てといった建物には付いていないと考える人も多いでしょう。それは、「専用の配管やポンプ、貯水槽といった設備が必要なので、工事費がかなり高い」「設置後も法令点検が必要かつ維持費がかかる」ため、個人レベルで付けるのは難しいと考えられているからです。しかし、近年は低層のアパート、一般住宅でもスプリンクラーを設けている物件が増えつつあるといいます。

その理由は「住宅用スプリンクラー(ホームスプリンクラーともいう)」が開発されたからです。これは乾式タイプ(普段、管内の水はカラの状態で、火災を感知したときのみ通水される)のスプリンクラーで、家庭の水道を利用するため、多額の工事費・維持費がかからない点が大きな特長。いくつかの種類が販売されていますが、主な仕様は次の通りです。

・水道水をダイレクトに放水するため、ポンプやタンクなど特別な設備が不要。
・乾式システムを用いてので、火災の時だけ水が流れる。そのため流水音が気にならない。
・スプリンクラーに何かがぶつかる、地震などの災害で配管が損傷、誤作動が生じても放水する心配はない。
・建物の配管内は常時カラのため、水道水による配管の腐食がない。
・メンテナンスが簡単。
・梅雨時などの結露、寒冷地での凍結はない(ただし、凍結の恐れのエリアは屋内に設置することが望ましい)

家庭用スプリンクラーが、なかなか実用化されなかった裏側には、火災時にしか作動しないため、管内の水が流動せず、水が汚濁してしまう「停滞水」の問題があったからです。それを解決したのが、あるメーカーの開発した「停滞水防止継手」で、この技術が登場したことで、住宅用スプリンクラーが普及していったそうです。



家屋を火災から守る、もうひとつの設備


スプリンクラーの中には、防火を目的とする「ドレンチャー設備」という種類もあります。これは家の中に付けるのではなく、近くの山火事や野火によって生じる火の粉や輻射熱、隣家の火事による延焼など、近隣で生じた火災から建物を守る装置です。

ドレンチャーは、遠隔起動押しボタン操作、開放弁の操作、周囲の火災を監視する検知器が連動することで、壁、窓、屋根に放水を行いますが、ヘッドの取り付け位置、放射方法によって以下のような種類があります。

◇構造物自体にヘッドを取り付ける方式
・吹き上げ式ドレンチャー設備:各階の下方にノズルを付けて、上へ向けて放水。壁面や軒下の可燃物(木部)の延焼を防止。
・吹き下げ式ドレンチャー設備:吹き上げ式とは反対に、各階の上方にノズルを配置、下へ向けて放水する。

◇構造物周周囲の地表面に配管するタイプ
・地上吹き上げ式ドレンチャー設備:地表面下のヘッドから、壁や軒下に直接放水。対象建築物を冷却して火災を防ぐ。
・水幕設備:地表面下に設置したヘッドから上方に放水して水幕を作り、輻射熱を反射・吸収・低減させて延焼などを防ぐ。

ドレンチャー設備自体は、消火設備に含まれる設備ではありませんが、重要木造建造物、屋外の文化施設を中心に、耐火構造物の開口部などを冷却、輻射熱を低減するために設けられています。2019年10月31日、世界遺産として登録されていた首里城が、火災によって、ほぼ全焼してしました。首里城には内部の貴重な資料を水浸しにしないためにスプリンクラーはなく、その代わりにドレンチャー設備があったそうです。ただ内部からの出火だったため、設備は機能しませんでした。

熱への反応、ボヤ程度でも作動してしまう可能性があるせいで、スプリンクラーの付いている文化財や施設は少ないといいます。とはいえ、万が一のことを考えると、今後は誤動作を起こしにくいスプリンクラーの開発を期待したいところです。



明治時代にあったスプリンクラー


紡績機械の輸入と同時に、イギリスから日本に初めてのスプリンクラーが輸入されたのは、明治20年(1887年)のことです。スプリンクラー自体は1723年、イギリスの薬剤師であるアンブローズ・ゴッドフリー(1660~1741年)が自動消火装置の特許を取得したという記録があり、その後、イギリスやアメリカで開発が進んでいきました。

世界的にスプリンクラーを広めたのは、アメリカの技術者であるフレデリック・グリンネル(1836年~1905年)です。グリンネルは先人たちの発明や特許を元に改良を重ね、1890年代には、ドライパイプバルブや自動火災警報システムを発明。世界初の実用的な自動火災スプリンクラーの先駆けとなったのです。

日本にスプリンクラーが上陸して20年、明治40年代~大正時代になると、「横浜赤レンガ倉庫(神奈川県横浜市)」に荷物用のエレベーターをはじめ、スプリンクラーや防火扉など、当時の最新技術が導入されます。現在、そのスプリンクラー設備は屋内にはありませんが、バルコニーではスプリンクラー関連の配管を見ることができるそうです。






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