多様化する「壁」の素材と種類



前回は日本の壁についての歴史や特徴について紹介しました。かつての木と土と紙が基本素材だった日本家屋ですが、明治維新を境に海外から新しい建材や技術が導入され、壁自体も変わっていきます。さらに近年は金属も使われるようになり、壁の外観、性能も多様化。住居の周辺環境や住む人のニーズによって、様ざまな外壁が採用されています。



擬洋風建築から始まった日本家屋の多様化


身分制度の厳しかった江戸時代は、住む家の大きさや形状も幕府によって統制されていました。しかし、明治維新以後は、建物にかんする規制もなくなり、人々は財力に応じた住宅を造るようになります。江戸幕府および諸藩、明治政府や民間の会社・学校などが招聘したジョサイア・コンドル(1852~1920年。イギリスの建築家。旧帝室博物館、鹿鳴館、ニコライ堂などを設計)をはじめとする「お雇い外国人(ヨーロッパ、アメリカの先進文化を、各分野・部門にわたり指導した外国人)が西洋建築の技術や大工道具を伝えたことから、建物の質は向上していきました。この頃、多く建てられたのが「擬洋風建築」です。これは近世以来の技術を身につけた大工、宮大工、左官職人などによって、西洋建築を参考に設計・施工された西洋風の建築物で、明治10年(1877年)前後に数多く建てられました。外壁にも、コンクリートをはじめ、モルタルや石膏プラスター、ドロマイトプラスターなど、いろいろな材料が使われるようになり、左官の技術も向上していきます。

ただ、明治時代に洋風住宅に住んでいたのは、政治家や実業家、貴族などの上流階級で、庶民のほとんどは和風住宅に住んでいました。



「関東大震災」の影響で普及したモルタル外壁


大正時代になると、洋風の生活に憧れた人々が、日本家屋に洋風を取り入れた「和洋折衷」の文化住宅に住むようになります。また、1923年(大正12年)に起こった関東大震災で、家屋が大きな被害を受けたことから、日本独自の耐震構造技術や防火への関心が高まりました。中でもモルタル外壁は、東京の木造建築が焼けてしまったことをきっかけに用いられるようになり、これが少しずつ全国へと普及していきました。

水とセメントと砂を混ぜ合わせたモルタル壁が、耐水性、耐火性、耐久性に優れていたことから、1960年~1990年頃までの日本家屋はモルタル造りが主流でした。しかし近年は、外壁には「サイディング(サイディングボードとも)」が用いられています。これは外壁に張る仕上げ用の板材のことで、材質によって「窯業系」「金属系」「木質系」「樹脂系」大きく4種類に分けられます。

・窯業系:現在、新築木造住宅の70%以上が採用する外壁材で。セメントに無機物や繊維を混ぜて板状にしたものを加工。豊富なデザインとカラーバリエーションがある。また手頃な価格で機能性が期待できる点も人気の要因。デメリットはコーキング材(目地から水が浸入するのを防ぐ素材)が数年で割れたり、隙間が開く点。
・金属系:「アルミサイディング」「ガルバリウム鋼板サイディング」「ステンレスサイディング」などの種類があり、アルミサイディングとガルバリウム鋼板サイディングが多く採用されている。
・木質系:「天然木」を材料にしたもの。住宅に木ならではの雰囲気を醸し出す。ただし、水に弱く、こまめなメンテナンスが必要。
・樹脂系:プラスチックを板状に加工したものだが、日本ではあまり馴染みのない建材。

一般的なモルタルと比較すると、サイディングは工期が大幅に短縮できるため工事費用を抑えることが可能です。また、工業製品ということで、製品の品質が安定。特に注目されているのが軽さで、モルタルに比べ、窯業系サイディングの重さは2分の1以下、金属系サイディングは約10分の1となっています。外壁が軽くなると、建物への負荷が減少し、耐震性の向上が期待できます。



最近、注目されているのが「金属系サイディング」です。これは柄付けされた金属板と断熱効果のある裏打材から成る外壁材。主なメリットとしては「工場生産され、仕上がりが均一」「塗装による仕上げが不要」「軽量で建物への負担がとても少ない」「断熱性に優れ、省エネ効果がある」「大幅な工期短縮が可能」「他外壁材で起こるひび割れや凍害の心配がない」などです。なお、金属サイディングの表面材には、次のような塗装金属板が使われています。

・塗装ガルバリウム鋼板:鉄でできた板に金属メッキ(シリコン、亜鉛、アルミニウム)を施した、アルミニウムを55%含んだめっき鋼板。アルミニウムの耐久性、亜鉛の犠牲防食作用という、両者の長所を併せ持つ優れた鋼板。従来の亜鉛めっき鋼板と比べて数倍錆びにくいとされている。
・塗装溶融亜鉛めっき鋼板:溶融亜鉛めっき鋼板に、焼付け塗装を施した外壁材。
・アルミニウム合金塗装板:加工しやすく、錆にもとても強いのが特長。とても軽量なので、建物への負担が少ない。
・塗装ステンレス鋼板:塗装用原板に優れた耐食性を持つステンレス鋼板を使用。非常に錆びにくく耐久性も良好。加工しやすいのも特長。

金属サイディングは、リフォーム、メンテナンスの面で、他の外壁材より優れているのも大きな特徴です。たとえば、築30年以上の外壁は内部も痛んでいるケースが多く、そのような建築物を外壁カバー工法でリフォームできます。また錆びにくいので、メンテナンスに手間がかかりません(まったく劣化しないわけではない)。ただ、他の外壁材に比べるとコストが高い点はデメリットです。






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