防災で見直される雨戸の必要性 1



近年は、再開発や法改正など住宅を取り巻く事情も変わり、家の建て方や利用建材も変わっています。そのひとつが「雨戸」でしょう。30年くらい前までは珍しくありませんでしたが、だんだんと用いられなくなり、最近は雨戸のない家も当たり前。子どもたちや若い世代の中には、雨戸を知らない人も少なくないといいます。

近年、忘れかけられていた雨戸ですが、先日の大型台風上陸をきっかけに再注目されています。というのも、先日の台風は風速50mを超えるもので、風によって窓ガラスが割れ、屋根が飛ばされる被害が多発。台風が直撃した千葉県では、ゴルフ場の鉄塔が倒れるなど、大きなダメージを受けています。

台風上陸前、気象庁や天気予報会社では、養生テープ(床養生と塗装用養生に用いる保護用のテープ。マスキングテープとも呼ばれる)や段ボールによる窓ガラスの補強を呼びかけていました。そのため、ホームセンターや均一ショップで、養生テープが売り切れになったのは記憶に新しいかと思います。

このような背景から、雨戸の必要性が見直されているようです。そこで今回は「雨戸」について考えてみました。



日本の気候や生活スタイルに応じて進化していった「雨戸」


雨戸は建具のひとつで、窓ガラスや古庭へ出る開口部(ガラス、障子問わず)の外側に立てる板戸のことをいいます。風雨や雪などを防ぐほか、防犯・防火、部屋の温度調節にも役立ち、昔ながらの和式建築だと戸袋が設けられ、使わない時は収納することができます。その始まりは平安末~鎌倉時代に登場した「遣戸」だといわれています。それまでは寝殿造りに用いられた、開口部の上から吊り下げて開閉する「蔀戸」が主流でしたが、平安末頃から引違いの板戸である遣戸も使われるようになりました。中でも鎌倉時代以降、薄い板の表面に、「舞良子」と呼ばれる細い桟を、横または縦に取り付けた「舞良戸」が様ざまな建物で使用され、蔀戸は衰退していきます。室町時代になると、「遣戸」は「書院造り(「書院」を中心にした中世~江戸時代の武家の住宅洋式)」に欠かせない建具となり、採光を目的とした「明かり障子(障子を貼った板戸)」などといっしょに使われ、室温の調整や風雨に対して効果を発揮します。そのため、人々の生活はより快適なものになりました。



雨戸の音に驚いた!? 徳川家康


現在のように、雨戸が独立した建具として認識されるようになったのは、戦国末期、安土桃山時代のようです。遣戸はもちろん、室内に障子や襖による多くの間仕切りが設けられる過程で、雨戸が出来たのではないかといわれています。慶長13年(1608年)年成立、江戸幕府作事方・大棟梁の平内吉政・政信父子が記した建築書『匠明』に「昔は雨戸がなかった。最近のものである」とあるのを見ると、安土桃山時代より前の時代には、雨戸が一般的ではなかったと推察できます。

江戸後期(天保年間)、沢田名垂(1775~1845年。江戸後期の国学者・会津藩)の著作で、日本初の住宅史概説書『家屋雑考(全5巻)』には、徳川家康が京都にあった織田信長の館に宿泊した際、雨戸を閉める音を敵襲と勘違いしたというエピソードが記されています。この話は明暦4年(1658年)、儒者・朱子学者である林羅山(1583~1657年)が、徳川幕府の命令により編集した『豊臣秀吉譜(全3巻)』にも、天正13年(1585)に秀吉の館での出来事として書かれているそうです。このことから、信長、秀吉と相手は違うものの、当時の京都や大阪の家屋には、雨戸が存在していたことがわかります。逆に家康の領地、東海地方では、まだ雨戸が普及していなかったとも考えられています。



雨戸が定着したのは江戸時代


雨戸が定着するのは江戸時代です。現代人の場合、雨戸といえば「窓に付いている板戸」でしょうが、江戸時代の雨戸は玄関にも用いられていました。その顕著な例は、庶民が住んだ長屋です。家屋自体が大きく、開口部も多かった武家屋敷や豪商・豪農の家とは違い、長屋は玄関と窓が兼用。玄関の内側には障子張りの引き戸が設けられ、その外側に雨戸をはめ込んでいたようです。朝になると雨戸は外し、それを家の前に立てかけていました。一方、商家や農家、各種店舗には、窓に加えて玄関に雨戸が付いており、夜は「心張り棒(戸や窓が開かないように押さえておく「つっかい棒」)を用いて、泥棒や盗賊などの侵入を防いだそうです。なお、長屋でも心張り棒が使われました。

雨戸自体も工夫が進み、家の正面に戸袋を作るのを避け、雨戸を側面に移動させて収納する「雨戸廻し」、戸締まりや防犯のために、雨戸の下部に付けて敷居に差し込む「猿」なども設けられるようになります。これらは現代の日本家屋における建具の基本となり、時代が下ると多くの建物で採用。雨戸は防災・防犯面はもちろん、そこに住む人が快適に暮らすために欠かせないものとなっていったのです。






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