引っ越し前に知っておきたい「原状回復」と「自己修復」
卒業、移動シーズンとなる3月は、引っ越しシーズンでもあります。実家を離れる学生、新規で一人暮らしを始める社会人1年生とは違い、転勤などで別のエリアへ移る人は、今まで住んでいた部屋を解約する必要があります。その時、気を付けたいのが「敷金の精算(原状回復)」です。「敷金が返ってくると思ったら、逆に驚くような請求が来た」という話はままあります。
引っ越しに加え、さらに出費が重なっては金銭的な負担も大きくなってしまいます。そこで「借主負担」と「原状回復」について調べてみました。
返金どころか「借主負担」の請求額に驚き!?
今まで借りていた集合住宅(アパートやマンション)を出る場合、まず大家さん、または管理会社に解約の意思と退居日を伝えます。電気や水道、ガスといったライフラインについても、忘れずに退居日を連絡しておきましょう。
退居の当日は、借主立ち合いのもと、管理会社や大家さんが部屋の状態や瑕疵などの確認を行います。その時、鍵や備品類も返却します。
立ち合い確認が終わって数日〜数週間のち、原状回復費用の見積もりが送られてきます。借主と管理会社、または大家さんの双方が原状回復費に合意した場合、借主が入居時に支払った敷金から、原状回復費用を差し引いた金額が返還されます。
しかし、入居後に生じた破損などが認められた場合は、原状回復費用を請求されることもあります。たとえば、借主が「最初から傷があった」といっても、貸主が「貸す前にはなかった」といったやりとりは、トラブルになることが少なくありません。管理会社、大家さんの見積もりに疑問があるなら、合意する前に確認することが大切。契約の際に取り決めた「借主が負担するもの」「貸主が負担するもの」を再度チェックしてください。できれば借りる前や入居の際、すでに壊れている、汚れているところを撮影するなどして、管理会社にも送っておくといいでしょう。
「原状回復」によってトラブルが生じる理由
「原状回復」とは、端的にいうと「賃貸物件から引っ越す際、部屋を入居時の状態に戻すこと」をいいます。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると、基本的には経年変化や通常の生活による磨耗は貸主側の負担、借主の故意・ 過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損については、借主が修理費を請求されるとあります。たとえば「畳の日焼け」などの経年変化は貸主側、畳にタバコなどの焼け焦げを作って放置すれば、借主側が負担するということです。
貸主側の主な負担
・日照によって生じる畳、フローリング、クロスなどの色落ち、変色
・家具を置いた場所にできる床やカーペットのへこみなど
・電気ヤケ(テレビや冷蔵庫の後部壁面にできる黒ずみ )
借主側の主な負担
・カーペットなどに飲料水をこぼし、手入れをしなかったために生じたシミやカビ
・くぎ穴やねじ穴、ペットによる傷や臭い、落書きによる汚れ、傷み
・タバコなどの焼け焦げ
・借主によるドアや窓などの破損
・期間中に、清掃や手入れを怠った結果、汚れたり傷んだりしたと思われる場合、負担発生/ガスコンロ、換気扇、風呂・トイレ・洗面台の水垢やカビ
ただし、原状回復は、借主が入居した当時の状態に戻すことではありません。ですから、退去時にクロスや畳を新品にする必要はないのです。とはいえ、原状回復のトラブルに巻き込まれないためにも、部屋を借りる前には、「どこまでが借主の責任なのか」「借主は退去の際、どこまで原状回復すればいいのか」をきちんと確認しておくといいでしょう。
日頃の清掃、修復も大切
「原状回復」のことを考えて、普段からの掃除は怠らないようにしたいものです。「長く住むわけではない」と手抜きをすると、換気扇などキッチンに油汚れ、浴室や洗面所にはカビや水垢が溜まり、それを大屋さん、管理会社に指摘されてしまう可能性もあります。一人暮らしの人にとって、毎日の掃除は大変だと思われますが、曜日を決めて習慣にするなど、部屋をきれいに保つように心がけてください。
またフローリングや壁のちょっとしたキズは、自分で修復することができます。最近のホームセンター、100円ショップでは、フローリングや壁を簡単に修復できるキットを扱っています。ただし、大きなキズやへこみは、個人が修復すると、かえって目立ってしまうこともあるため、修復の専門業者、プロの職人に任せた方がいいでしょう。照明器具、スイッチなどを、自分好みの製品に付け替えた場合も、元から付いていたものに戻しておく方が無難です。「立つ鳥後を濁さず」という言葉がありますが、新居に移ってから揉めないよう、引っ越し前にチェックしておいてください。