借主負担DIY型賃貸



今回は、前回の本コラムで述べた空き家対策の中で少し触れた「借主負担DIY型賃貸について取り上げたいと思います。



借主負担DIY型賃貸とは


前回空き家問題で見たように、適切な管理が行われていない空き家は防犯や防災、衛生面や景観など周辺環境の面での問題が危惧されています。しかし空き家にちょっとした工夫を施すことで有効活用し、地域の活性化につながっている事例も見られます。

そこで注目されるのが借主負担DIY型賃貸です。

賃貸住宅は持ち家に比べて入居時の費用負担を抑えることができ、気軽に別の物件に住み替えることができるなどのメリットがあります。しかし、他人からの借り物であることは厳然たる事実。室内の模様替えやリフォームなど借主の自由に変えることはできません。そしてもし貸主の了解を得て模様替えをした場合でも退去時には元の状態に戻さなければなりません。これを原状回復義務といいます。また、貸主にとっても、入居者が変った際には原状回復以外の部分は、新たに賃貸に出す際必要に応じて改修や修繕を行いますが、その分費用もかかります。親から引き継いだ実家を賃貸に出そうにも、改修費用がかかったり、そもそも賃貸事業に不慣れな個人所有者も多く、その結果使われないまま空き家になるケースが多く見られます。

こうした状況を背景に、昨年9月に国土交通省では「個人住宅の賃貸流通の促進に関する検討会」を設け、その報告書の中で「賃貸借ガイドライン」が設けられましたが、特に画期的と話題を集めたのが「借主負担DIY型」です。


「借主負担DIY型」賃貸借契約は、カスタマイズ賃貸とも呼ばれ、借主が自費で自由に部屋の修繕や模様替えをすることができ、退去時には原状回復義務が免除されるというものです。つまり他人のものを自己負担で自由に作り変え、返す際にはそのままの状態で返すことができるのです。また、貸主も通常入居前になされる修繕は行う必要はありません。なお、DIYという言葉がありますが、日曜大工のように自らの手で模様替えをする場合だけでなく専門業者に依頼する場合も含まれます。
借主負担DIY型賃貸には大きく分けて2パターンあり、入居する際に設備面には支障がなくそのままの状態で借りる「現状有姿型」と、支障部分や不具合がある状態で借りて借主が負担して修繕する「一部要修繕型」があります。

なお、以前このコラムでも取り上げたように、原状回復義務とは賃貸契約が開始された当時と全く同じ状態に戻さなければならないという意味ではありません。通常の使用をした上で、時間の経過に伴って古くなった分については、借主の負担で現状回復させる義務はないとされています。つまり、ピカピカの新築賃貸を借りた場合であっても、退去時にピカピカの状態に戻す必要はなく、通常使用して古くなった分についてはそのまま返せばいいのです。



賃貸物件が自分好みに


借り主にとっては、まず賃貸物件でありながら持ち家のようにあ自分の好みの模様替えなどカスタマイズすることができます。またその費用は自己負担になる分、賃料は安い傾向にあります。そして既に述べたように賃貸物件につきものの原状回復義務がなく、退去時にはそのままの状態で貸主に物件を返還すれば済みます。また、貸主にとってもメリットがあります。入居前の修繕にかかる費用が必要なく現状のまま貸し出すことができるうえに、借主が自らの費用でカスタマイズするため、その後長期間に渡って住み続ける場合が多く安定した賃貸経営が期待できます。また、借主の好みではありますが、リフォームによって資産価値が上がる場合も多く見られます。



事前確認はしっかりと


借主が自由にリフォームしたり模様替えできるといっても、何でも自由に変えられるというわけではありません。原則そして基本的に壁や床のコンクリートなど、建築物の躯体部分に手を加えることはできないとされています。また、集合住宅で床材を張り替える場合などは下のの階に足音が響くような素材や構造を用いることはできないとするなど、通常の居住ルールを守らなければならないことは言うまでもありません。高額な内装や設備を施した場合でも、貸主に費用請求することは一般的にできません。借主に所有権があるものを設置した場合でも、退去時には設置したままにし、貸主に設置費用や買取請求をしないとするケースが一般的です。こうしたことをめぐって後にトラブルにならないよう、事前に貸主と借主との間で工事の内容や実施方法などについて十分に話し合い書面に残すことが大切です。加えて工事の実施後にも施工状態を確認するようにします。



機会があれば空き家を活用したいと考えている所有者や入居希望者は多いものですが、不安もつきものです。そうした状況にあって、現在自治体が中心となりNPO団体や民間の宅建業者が協力して空き家の有効活用に取り組む例が全国で見られますが、中でもこの借主負担DIY型賃貸の利用が注目されています。もちろん空き家だけでなく、賃貸住宅全般において借主負担DIY型賃貸がうまく活用されれば賃貸住宅市場の活性化と住み替えが促進され、豊かな住環境の実現につながるものと期待されています。







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