「住みたい物件」や「住みよい街」は再開発エリアで先取り? その1






建築・不動産関連媒体を中心に、タウンガイドや情報誌などでは、毎年「住みたい街」ランキングが開催されています。上位に推されるのは、主に東京都や神奈川県、関西なら大阪府といった大都市ですが、近年は「住みたい街」(=エリア)だけでなく、「住みやすい街」「住み心地のよい街」(=環境が良い、交通インフラの進化、行政サービスが充実ほか)という条件が加わり、より重視されているようです。この傾向を受け、関東では、さいたま市、川口市をはじめ、柏市、大宮市、川越市など、埼玉県内のエリアがランクイン。また、新型コロナウイルスの影響でリモートワーク普及し、北海道(札幌市)、福岡県(福岡市)など、地方都市を選ぶ人も増えています。



さらに、このところ話題の「再開発」も手伝って、「再注目される街」「新たに脚光を浴びる街」も少なくありません。特に後者の場合、エリアが丸ごとリニューアルされ、商業施設、学校、病院、さらに戸建てやマンションなど、さまざまな施設がまとめて建ち、様相が一変することもあります。



購入・賃貸にかかわらず、引っ越しを考えているのであれば、再開発によって、街の活性化が期待できるエリアは狙い目だといえます。このところ渋谷や虎ノ門、品川地区といった東京都心のビジネスエリアの再開発に注目が集まっていますが、それ以外にも中野、十条、板橋、青梅ほか、住宅地として人気になりそうな地域の開発も進行中です。



そこで今回は、再開発にスポットを当て、特長をはじめ、メリットやデメリットなどを調べてみました。




「東京オリンピック」「日本国際博覧会」が呼び水に。大都市のビッグな再開発計画




2020年(延期のため2021年に開催)2回目の「東京オリンピック」、2025年の「日本国際博覧会(略称「大阪・関西万博」。以下大阪万博)」開催などに伴い、日本各地で行われてきた大規模な「再開発」は、現在も続けられています。



2回目となる「大阪万博」の舞台・夢洲(ゆめしま・大阪府大阪市此花区)は、大阪ベイエリアに作られた約390haの人工島。世界の主要港を結ぶコンテナターミナルを有しており、都心部はもちろん、関西国際空港、神戸・京都方面を含め、関西周辺への道路網が充実しています。大阪万博に伴う再開発は、特に梅田・大阪駅周辺で活発に行われ、景観も大きく変わる予定です。



東京の再開発は、オリンピック終了後も継続中です。2023年に高さ約325mの「虎ノ門・麻布台プロジェクトメインタワー(最寄り駅・神谷町)」、2027年には、地上63階、高さ約390mで東京駅に隣接する「TOKYO TORCH(東京トーチ)」という、国内最高層の超高層ビルが連続して竣工予定。他にも複数のプロジェクトが進行中で、都心の風景も一変すると思われます。



また、鉄道乗降数世界一を誇る新宿駅西口も、「新宿グランドターミナル(駅、駅前広場、駅ビルなどが有機的に一体化する計画)」構想に基づく再開発工事が始まり、その一環として小田急百貨店の入る小田急ビル、新宿地下鉄ビルデイングが建て替えられます。竣工は2029 年の予定で、オフィス、商業機能を備える地上 48 階、高さ約 260 mの超高層ビルに生まれ変わります。さらに小田急百貨店隣の京王百貨店周辺も、2023年から2040年代にかけて大規模な開発が行われるそうです。


知っているようで知らない「再開発」の基本





あちこちで耳にする「再開発」ですが、いろいろな種類があり、たとえば施設や建築物の建て替えのみを行うものから、あるエリアのすべてに渡って再構築する規模の大きなものまでさまざまです。また、民間主体、公共で行う開発事業など、施行の中心となる組織や団体も異なります。



再開発は大まかに「土地区画整理事業」と「市街地再開発事業」の2つに分けられます。



・土地区画整理事業

都市計画区域内で、土地の造成宅地の区画や形の変更などを行い、道路や公園道路、公園、河川のような公共施設の新設・整備、袋地の解消、不整形な土地を改善し、宅地の利用増進を図るための事業で、土地区画整理法に基づいて施行されます。



・市街地再開発事業

都市計画法と都市再開発法に基づき、土地の細分化、老朽化した木造建築物の密集、十分な公共施設がないなど都市機能の低下したエリアにおいて、敷地の統合・共同化、共同建築物の建設、公共施設の整備などを行なうことにより、既成の市街地をリニューアルする事業。土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を目的として実施されます。なお、市街地再開発事業には、第1種と第2種の2種類があり、後者は公共性・緊急性が著しく高い区域において行われます。



◇第1種事業「権利変換方式」:

現在の土地・建物にかんする権利を、等価で新しい再開発ビルの床(および土地の共有持分)に置き換える方式。従前建物・土地所有者などは、従前資産の評価に見合う再開発ビルの床(権利床)を受け取る。なお、事業費は土地利用によって生じる新たな床(保留床:事業により新しく生み出された、権利者に与えられずに残された敷地・床のこと)の処分(新しい居住者や営業者への売却等)などによって賄うため、従前資産に見合う床を自己負担なしで取得することができる。一般の等価交換方式(ディベロッパーが共同住宅などの建物を建設し、土地と建物の評価額に応じて双方が土地と建物を取得する方法。地主は自己資金を必要とせず、土地の一部を提供することにより、等価の建物の一部を取得する)に比べ、税金が優遇される等のメリットもあり。



◇第2種事業「管理処分方式(用地買収方式)」:

事業施行者が、いったん施行地区内の建物・土地等を買収又は収用。買収によって権利を失った者は、希望をすれば、事業によって新たに建設される建物に対する相応の権利を得ることができる。保留床処分により事業費をまかなう点は第一種事業と同じ。



再開発事業はこのような方法で行われ、対象区域に存在するさまざまな問題を解消し、新しい街へと再生させます。不動産物件はもちろんのこと、公共施設・商業施設、交通インフラなども充実するため、引っ越し先として検討するべきだといえるでしょう。