いざという時に役立つ「引っ越し費用の内訳」について







住みたい物件が見つかり、無事に契約できてほっとひと息……といいたいところですが、次に「引っ越し」が控えています。単身者が近隣に引っ越すのであれば、荷物も少なく、自分で新居に運ぶこともできます。しかし、数人の家族単位ともなるとそうはいきません。たくさんの家財を輸送するには大きなトラックが、大がかりな作業を行うには複数のスタッフが必要ですから、引っ越し業者への依頼は不可欠です。



ただ、大手から中小まで引っ越し会社は数多ありますし、料金形態やサービス内容もそれぞれ異なります。何度か経験していれば別ですが、初めて大がかりな引っ越しをする場合、業者の選択には時間がかかるといえるでしょう。



そこで今回は、業者選びに知っておくと役に立つ「引っ越し価格の基本的な内訳」「サービス内容」などを調べてみました。ポイントを押さえておけば、目的に合った業者が見つかりやすくなります。




「引っ越し価格」はどのように定められている?



引っ越ししようと業者や比較サイトのホームページを見ると、価格表や料金相場が記載されています。その表記は「家族構成別(単身者)」「曜日別」「時間帯別」など様ざまで、どれを参考にしていいのかわからないことも多いと聞きます。



また、引越し料金には、いわゆる「定価」がありません。引っ越し会社の定めた条件に応じて、値段を決めているため、各社の間に差が生じるわけです。



ただ、引越し料金は下記の項目から構成されているのが一般的で、ここから具体的な金額を算出しています。



・基準運賃(基本運賃):荷物を運ぶのにかかる料金。時間制(4時間と8時間)と距離制があり、前者は引越しにかかる時間、後者は引越しする距離に応じて変わる。基本的に短距離(近距離・約100km以内)の場合は時間制、長距離(遠距離)場合は距離制で運賃を定めている。



・実費:引っ越し作業にかかる経費。人件費(荷役・荷造りスタッフ費用)、ガソリン代、梱包資材費、トラックのチャーター費、有料道路利用料などで、引っ越し業者によって異なる。



・附帯サービス料(オプション料金):基本的な引っ越し作業以外のサービスを指す。主にエアコンの取り外しと設置、不用品の処分、ピアノ輸送、アンテナの取り付け・取り外し、ハウスクリーニングといったもので、サービス内容、および費用は引っ越し会社によって変わる。



なお、引っ越しの基本的運賃は、国土交通省が定めた「標準引越運送約款」が基準になっています。現在、多くの事業者が採用しているため、時間制・距離制共にそれほど大きな差はありません。



引っ越しするなら知っておきたい「標準引越運送約款」




「標準引越運送約款」とは、引っ越し業者と利用者の間に起こり得るトラブルを未然に防ぐため、国土交通省が定めた約款です。これは、一般家庭でトラックを貸し切って行う引っ越しに適用されるもので、「見積もり時にお客様に提示する」こととなっています。先述の通り、多数の引っ越し事業者が採り入れていますが、必ずしも使用する義務はなく、事業者が独自で約款を作成することも可能です。ただ、その場合は、国土交通大臣の認可を受けなければなりません。



では、基本ルールである「標準引越運送約款」の内容を、もう少し詳しく見ていきましょう。



◇見積もりは無料:標準引越運送約款において、見積料は請求できない(利用者の了解を得た時は、下見に費やした費用を請求することがある)



◇見積りの際には、原則的に内金や手数料を支払う必要はない(下見を行った場合の費用を除く)



◇配送できない荷物がある:引っ越し事業者は、次のような荷物の扱いを拒絶することができる。

・利用者が携帯することが可能な貴重品:現金、有価証券、宝石貴金属、印鑑、預金通帳、キャッシュカードなど

・火薬類といった危険品(灯油など)、不潔な物品等、他の荷物に損害を及ぼす恐れのあるもの

・特殊な管理が必要で、他の荷物といっしょに運送することに適さないもの:ペット、植物、ピアノ(別料金で扱う業者がほとんど)、美術品、骨董品など

・電子機器など、壊れやすいもの:パソコンといった電子機器は、見積もり時に申告すれば、運送可能



◇解約・延期手数料について:引っ越し事業者は、キャンセルや延期などの原因が依頼者の責任による場合、解約・延期手数料を請求することができる。なお、解約や延期の連絡が、見積書記載の受取日(引っ越し業者が荷物を受け取る日)の前日、または当日になされた時に限る。解約・延期手数料は次の通り



・連絡が受取日の前日:見積書に記載した運賃の10%以内

・連絡が受け取りの当日:見積書に記載した運賃の20%以内



なお、すでに実施、着手した附帯サービスにかかった費用(見積書に明記されたもの)は、依頼者が支払わなくてはなりません。ただし、悪天候や自然災害など、どうしてもその日の作業が困難な場合は、双方合意の上でキャンセル料等が生じないこともあります。予定日近くに「仕事の都合で延期せざるを得ない」「急な予定が入った」といったトラブルが起きた際は、まずは連絡するようにしてください。




今回はここまで。次回は、引っ越し後に適用される「標準引越運送約款」についてお話しします。