賃貸探しに役立つ、「特定優良賃貸住宅(特優賃)」のメリット、デメリット







前回は、物価高騰、エネルギー不足などで生活に対する不安が高まる中、少しでも家計を助けるための対策として、「家賃補助制度」をクローズアップしました。さらに、グレードの高い物件であり、各都道府県(あるいは市町村)の自治体が家賃まで補助してくれる「特定優良賃貸住宅(特優賃)」の概要もご紹介。「中堅所得ファミリー」対象で、条件に該当していればお得な物件なのですが、存在を知らない方も少ないといいます。



ただ、前回説明したように「特定優良賃貸住宅」の入居には細かい条件があり、手続きが必要になります。自治体からの告知や情報も少ないため、いざ申し込みをしようにも、「何から手を付けていいのかわからない」という声も少なくありません。


家の住み替えでは自己資金があった方がよいのですが、家の売却価格によっては売却益が出る場合や住宅ローンを完済できることもあります。その場合には、手続きにかかる諸費用などが用意できれば買い替えは可能です。


そこで今回は「特定優良賃貸住宅」について、メリットだけでなくデメリットも含めて、もう少し詳しく見ていくことにしましょう。




「特定優良賃貸住宅」の主なメリット



「特定優良賃貸住宅(以下:特優賃)」の大きなメリットとしては、「国と地方自治体が家賃負担をしてくれる(家賃が安い)」ということがあげられます。負担費用は利用する世帯の所得額によって異なり、所得が低くなるほど補助額は上がります。つまり、低所得な家庭ほど家賃負担は少なくなります。



家賃補助は、入居後から毎年一定の割合で減っていき、利用者負担額が増えていく(増加率は自治体によって異なる)仕組みで、最長で20年間受けられます(一部の特優賃では、期間内固定の金額で補助される場合もあり)。ただ、補助期間が終了しても、入居者負担額が本来の家賃を超えることはありません。



次にあげられるのは、「質の良い物件が多い」ことでしょう。もともと単身者ではなく、二人以上の親子、夫婦など、家族対象の制度ですから、2LDK~3LDKといった、いわゆるファミリー向け物件が中心。また、面積や構造について、各自治体で定められた基準を満たしているのも特徴です。駐車場が設けられている物件(基本的に敷地内に1世帯1台分の駐車場を確保)もあります(注:共益費・駐車場代は補助の対象外)。



「仲介手数料や礼金がかからず、初期費用の負担が少ない」というのも、特優賃のメリットだといえます。入居に際して、 基本的に敷金(最大家賃3ヶ月分)と入居月の家賃のみですから、引っ越し時の費用を抑えることが可能です。また、一般的な賃貸だと、2年ごとに契約更新を行い、その時、更新料が必要になります。しかし、特優賃は更新料がいらないので、家計の負担を軽減できます。



「特定優良賃貸住宅」にもデメリットはある




特優賃は基本的に魅力的な物件だといえますが、前回ご説明したように、入居するなら収入や家族構成、国籍などの厳しい条件をクリアしなくてはなりません。また、当然ながらマイナスポイントもあります。そこで特優賃の主なデメリットを調べてみました。



まず、最初に考えられるのは、一般の賃貸と比べて、特優賃の数がとても少ないことです。物件数は自治体によって異なりますが、自分の住みたいエリアに必ずしも特優賃があるとは限りません。もし、見つかったとしても、物件に空き室がないケースは多いようです。さらに間取りや内装などを含めると、自分の希望を完全に満たす物件を探すのはとても難しいといえます。



入居中のデメリットとしては、毎年、入居世帯全員の所得を調べられるという点があげられます。補助額は、世帯収入に応じて決定するわけですから、入居者は、前年度の年収が確認できる給与明細や源泉徴収票などを提出しなければなりません。



更新審査後、結果に応じて、入居者の負担額が変動する場合があります。その際、年収が減って下限を下回っても、家賃の滞納や契約違反などがなければ退去させられることはありません。逆に入居後に世帯収入が増え、収入区分に 変更が生じた場合は、入居者負担額および補助額が変わります。とはいえ、すぐに変更が適用されることはなく、急に家賃が上がらないような緩和措置がとられています。



なお、入居後の家族増減変更については、出生、死亡、婚姻以外は原則として認められていません。後から同居者を増やすことはできないので、十分注意をしてください。


「特優賃」を探すなら、同時に通常の物件も視野にいれておく




特優賃のメリット、デメリットをざっと見てきましたが、おおよその仕組みは全国共通です。ただ、細かい規則や条件は地方自治体によって異なりますから、不明点については、役所の窓口や特優賃を扱う会社に問い合わせてみるのがおすすめだといえます。



しかし、先に説明した通り、特優賃の数はそれほど多くありません。新築ともなると人気が殺到し、抽選会の競争率もかなり高くなります。そこで考えたいのが、特優賃以外の公営住宅です。



たとえば東京都の場合、都が管理する「都営住宅」をはじめ、都市再生機構(日本住宅公団を前身とする「都市基盤整備公団」と「地域振興整備公団(地方都市開発整備部門)」が合流)が扱っている「UR住宅」、住宅供給公社・地方住宅供給公社による「公社住宅(公社賃貸住宅)」などがあります(ちなみに東京都の特優賃は「都民住宅」)。



特優賃は狭き門ですから、物件を探す際は、自分の条件や希望に合った公営住宅も比較しながら、理想に最も近い物件を見つけるのがいいといえるでしょう。