年齢を重ねても、元気で快適に生活にするための住まいとは







歳をとると、「階段が上りにくい」「段差に足が引っかかる」など、今までできたことができなくなることも多くなってきます。加齢によって身体が動きにくくなるのは、人間の定めですから仕方のないことです。定年の声が聞こえる年齢になると、老後のことがいろいろ心配になります。また、高齢の家族がいる場合も、将来の暮らしに不安を感じるでしょう。




しかし、早まった「介護リフォーム」をしてしまったがために、費用が無駄になってしまうというケースが少なくありません。「元気なうちに、老後の安心した生活」を望むのは当然ですが、介護優先に先走ると、逆に負担が増えてしまいます。

特に、まだ働きたい、働けるシニア世代の中には、「老人ホームへ入居するのは気が乗らない」方も多いといいます。そこで、快適なセカンドライフが満喫できる物件を調べてみました。





まだまだ元気なシニア世代。高齢者の就業率は25.1%



日本は、高齢者人口の割合が世界で最も高い国です。総務省統計局の調査(2018年)によると、高齢者人口の割合は28.1%で、次いでイタリアの23.3%、ポルトガルが21.9%、ドイツは21.7%となっています。なお、2021年9月発表の人口推計(総務省)によると、65歳以上の高齢者数は2018年の3557万人から3640万人に増え、過去最多を更新。総人口に占める割合も過去最高の29.1%で、世界一の状況が続いています。ちなみに世界最高齢は119歳で、日本人の田中カ子さんがギネスワールドレコーズ(英国)に認定されています。

その一方で、働く高齢者も増えています。65歳以上の就業者数は906万人(2021年9月発表)と、17年連続で増加。過去最多となっており、就業者全体に占める割合も13.6%で、こちらも過去最高を更新しました。

世界に照らし合わせると、日本における高齢者の就業率は25.1%で、アメリカ18%、カナダ12.8%、英国10.5%、ドイツ7.4%、イタリア5%、フランス3.3%など、他主要国を上回っています。

就業の理由は様ざまでしょうが、日本のシニア世代はアクティブな方が多いといえそうです。今は新型コロナ禍で減少しているとはいえ、仕事のあるなしにかかわらず、美味しいものを求めて外食に出かけたり、国内外の旅行へ行ったりするのも中高年層が中心だといいます。





住む人のニーズに応じて選べるシニア世代向け住宅




「身体は元気なので、老人ホームに入るのはまだ早い」とは思いつつも、「若い頃に建てた一軒家では広すぎるし、掃除やメンテナンスが大変」「夫婦二人暮らしなので、もっとコンパクトな物件に引っ越したい」というケースは少なくないようです。そのような場合、次の住まいの候補として、「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」「シニア向け分譲マンション」などが考えられます。

・サービス付き高齢者向け住宅
サ高住、サ付きとも呼ばれ、バリアフリーで利用者の安否確認、生活支援サービスを受けられる賃貸住宅。比較的に介護度が軽い、または自立している人が利用している。物件は介護サービスを必要な分だけ受けられる「一般型」と介護度別の定額で、介護スタッフがサービスを提供する「介護型」の二種類に分けられる。建物の作り、介護スタッフなどの人員配置に一定基準があり、行政に届出が必要。施設によっては、部屋にキッチンやトイレ、浴室が付いており、利用者のニーズに応じて、自由度の高い生活ができる。

・シニア向け分譲マンション
高齢者の暮らしの不安を解消してくれる、民間事業者販売・運営のバリアフリー分譲住宅。見守りや安否確認、食事提供、生活支援を受けられるが、設備基準や届出の義務がないので、物件によりサービスが異なる。自立している人、要支援の高齢者など入居者は様ざま。中にはフィットネスやレクリエーション付きの施設もあり。サービス付き高齢者向け住宅との違いは、物件を売却・相続・賃貸することが可能である点。ただし、購入費用や管理費・修繕積立金が高いというデメリットも。






元気なシニアや将来を考えている人には「バリアフリー賃貸」もおすすめ




「介護サービスを有する物件は、まだ必要ない」「いつかは高齢者になるのだから、その時に備えて」という人には、「バリアフリー賃貸」も選択肢のひとつです。バリアフリーの意味は、生活の中で感じる様ざまな不便、活動をするときに障壁になるものをなくすことです。
戸建て、マンションやアパートなど、住まいにおけるバリアフリーとは、たとえば、「床の段差をなくす」「廊下や階段に手すりをつける」「廊下の幅を広げ、歩きやすくする」といった仕様を指します。

近年は「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」「シニア向け分譲マンション」でなくとも、バリアフリー対策が施された物件が増えています。このような物件は、障害のある人や高齢者はもちろん、小さな子どものいる家族にも適しており、床の段差に躓いて転ぶなどの事故を防ぐことができます。

ただし、バリアフリー賃貸にも「フラットフロア(各部屋間の床の段差、玄関や浴室の段差も極力小さくすること)」設計のみの物件もあれば、車いすで生活できる完全なバリアフリー物件もあります。そのため、自分の目的に合っているかどうか、内容を確認することが大切だといえます。バリアフリー物件を借りる際は、情報豊富な不動産会社やハウスメーカーなどに相談しながら部屋探しをするといいでしょう。