移住ライフを快適に楽しむために、考えておきたいこと







ワクチン接種率が上がったこともあり、新型コロナウイルスの新規陽性者は減少しています。緊急事態宣言、飲食店の営業自粛も解除されたことで、人びとはかつての生活を取り戻しつつあるといえるでしょう。


行動制限が緩和されるということは、通勤・通学も再開されるということです。今まで「リモートワーク(テレワークとも)」で働いていた人は、また「満員電車」に揺られ、あるいは長時間をかけて、オフィスに通うことになります。

ただ、長いリモートワーク生活の中で、たとえば「会社の方が仕事しやすい」「家事や子育てとの両立には在宅がいい」など、働き方もさらに多様化しているようです。そのひとつが、都会を離れる「地方移住」で、行動規制が解除されてからも関心を持つ人は少なくないといいます。

そこで今回は、「地方移住」について調べてみました。




「地方移住」についての基礎知識



「地方移住」と聞くと、「都会から地方に移り住む」というイメージですが、その内容は実のところ様ざまで、近年は移住者によって、いろいろなスタイルが選択されています。

日本人の国内移住が本格的に始まったのは、明治時代中期頃。当初は農村から都市に出稼ぎに行く人が主流でした。その後、終戦を契機に始まった高度経済成長期になると、多くの人が年に移動。21世紀初頭まで都市人口は爆発的に増加し、世界的にも類を見ない都市化社会になりました。

その一方で、1980年代後半~90年代半ばにかけてアウトドア志向が高まり、その影響も手伝って「田舎暮らし」が広まります。さらに21世紀に入ると、定年退職した人が田舎に移住するケースが増え、地方移住はリタイア後のライフスタイルとして、選択肢のひとつになっていきました。

また、1990年代に入ると、地方で仕事を得る「Uターン」「Iターン」転職が注目されるようになり、これらを選択する人が増えていきます。これは都市エリアに住んでいた人が、地方や田舎に移って、仕事をする働き方。2007年(平成19年)に策定された、「ワーク・ライフ・バランス憲章(「生活と仕事の調和」の意味。「就労による経済的自立ができること」「健康で豊かな生活のための時間が確保できること」「多様な働き方・生き方が選択できること」を目指す)」など、仕事と生活のどちらも充実させる働き方、生き方の実現を促進する取り組みのひとつで、先の「Uターン」「Iターン」に加え、「Jターン」という3つの転職スタイルがよく知られています。それぞれの内容は次の通りです。

〇Uターン
・地方出身者が都市の学校に進学。卒業後に故郷に戻って就職すること
・地元の学校を卒業して都会で就職、その後、地元で転職するケースも含む

〇Iターン
・都市圏で生まれ育った人が、都会で就職した後、地方へ移住して働くこと(たとえば東京郊外出身者が、新宿副都心などで就職。その後、地方で転職など)

〇Jターン
・都市エリアに就職した地方出身者が、生まれ育った故郷とは違う地方で働くこと
・Jターンをする場合、地元に近い地方都市などを選択する転職者が少なくない

U・I・Jターン転職に目が向けられるようになった背景には、様ざまな理由があるといわれています。バブル崩壊以後、「どんな業界でも企業であっても、決して安定しているとは限らない」という事実、「終身雇用神話」が崩れ去ったことなどを受け、そういうことなら「やりがいのある仕事をしたい」「好きな場所で暮らし、働きたい」など、勤労に対する意識や価値観が変化。その流れで、「地方に住んで、地方で働く」スタイルがクローズアップされるようになったのです。

ただし、U・I・Jターン転職の影で、「Oターン」という現象も起きています。これはUターンした若い世代が、都会と違い刺激が少なく、保守的な地方や田舎での生活に飽きてしまい、再度都市エリアに戻って行くというもの。出身地にかかわらず、どうしても地方暮らしには合わない人もいるようです。





「地方創生」も拍車をかけた「地方移住」



2014年(平成26年)に発表された「地方創生」も「地方移住」に拍車をかけたと考えられます。地方創生とは、「少子高齢化(超高齢化)」「地方の人口減少」「東京一極集中」という日本が直面する問題に対して、政府や各地域が住みよい環境の確保に取り組み、活力のある社会を創生することを目指すものです。地方創生には、先述したU・I・Jターンも含まれ、地方で起業・就業を考えている人には、公共団体が支援金を支給する取り組みなどへの支援が行われています。

このような背景に加え、新型コロナウイルスによって広まった「リモートワーク」が一般化しつつあることから、地方移住を考える人は増加すると考えられています。ただ、「住居も仕事も地方」というスタイルだけでなく、「都会と地方に拠点を持つ」「都会の家は手放さない」など、自分のニーズに合った地方暮らしをする移住者も現れていることから、地方移住の方法は、ますます多様化していくことでしょう。