外出自粛で増える「音楽のある暮らし」を楽しむ人~おうちの防音・遮音事情その1







新型コロナウイルスによる外出自粛の影響で、趣味を持つ人が増え、また趣味自体も多様化しているといいます。たとえば、今まで仕事帰りや休日、食事や飲み会、ショッピングなどを楽しんでいた人は、家にいる時間が増えて手持無沙汰になります。そこで「料理」や「絵画」をはじめ、「ハンドメイド」「フィットネス」「ガーデニング」といった、自宅でできる趣味を始めるのだそうです。また、趣味に費やす時間が増えたために腕があがり、ネットショップを立ち上げたら、副業で稼げるようになったという知り合いもいます。



多種多様化する「おうち趣味」の中でも、特に人気を伸ばしているのが「楽器(演奏)」だといいます。というのも、ある大手楽器店で2019年と2020年の売り上げ(6月~8月)を比較したところ、ウクレレやアコースティックギターの数字が200%以上と大きくアップ。どの業界もコロナ禍で軒並み業績が落ち込んでいる中、驚くべき結果となっています。

この状況は今も続いており、楽器の売り上げだけでなく、音楽教室(オンラインレッスンも含む)に通う人も増えているそうです。また、コロナ自粛による音楽ブーム(!?)に比例して、「防音・遮音」に対する意識も高まっているといいます。

そこで今回は、音楽と防音にかんするお話をしていこうと思います。




「おうちで音楽」で人気を集める楽器とその理由



今春、創業1892年(明治25年)、楽器の老舗として知られる山野楽器店が、「2020年度に一番売れた楽器TOP10(2020年6月~2021年2月)」を発表しました。コロナ自粛により、自宅で趣味を嗜む人が増え、音楽~楽器演奏も人気を伸ばしているのだそうです。新たに楽器を購入する人も多く、山野楽器でも様ざまな楽器が売れているといいます。同店の売り上げ1位となったのは「アコースティックギター」。弾き語り(楽器を弾きながら歌うこと。ギターやピアノ、キーボードがメイン)が人気を呼んでいることから、かつてギターを嗜んでいた人が再開することが多く、若い女性初心者も増えているそうです。電源(コンセント)が必要なく、基本的にギターを購入すれば(ただ、チューナー機器はあった方がいいとのこと)、すぐに音が出せる点も選ばれる理由となっています。

アコースティックギターと同じように、手軽に始められることで人気を得ている楽器が売り上げ3位の「ウクレレ」です。アコースティックギターもウクレレも、弦を弾いて音を出す「弦楽器」ですが、前者は一般的に6弦、後者は4弦。ギターに比較して小ぶり、ネックが細く、コードを簡単に押さえられるため、若い人からシニアまで、年齢性別を問わず、購入しているそうです。ちなみに大きくわけて、「ソプラノ」「コンサート」「テナー」「バリトン」という4種類のサイズがあります。

ベスト3以下を見ると、4位はヘッドホン利用で、周囲に気兼ねなく練習できるとして、こちらも幅広い年代に支持されている「電子ピアノ」、5位には場所を取らずにコンパクト、手軽に始められる「キーボード」という、鍵盤楽器がランクインしています。

上位の楽器を見て気付くのは、アコースティックギター、ウクレレなどの「アコースティック楽器」や「ヘッドホンの使える楽器」が人気を締めていること。アコースティック楽器とは、いわゆる「生楽器」ともいわれ、PA機器などの電気的な増幅なしでも演奏することができ、音は比較的に小さめ。また、電子ピアノやキーボードといった楽器は、ヘッドホンで演奏すれば、周囲に音が漏れません。このことから、「音量の小さな楽器、調節できる楽器」が選ばれていることがわかります。

実はここまで、「ランキング2位」を紹介していなかったのですが、それはこの「音量」を抑え、コントロールできる「防音室」なのです。





周囲を気にせず練習するなら「防音室」



いくらアコースティックであっても、ギターやピアノを弾くとどうしても音が出てしまいます。これが生活音(会話、ドアの開け閉め、白物家電の使用音、テレビやステレオから出る音ほか、日常生活において発生する音)の多い昼間なら、それほど気にならないのですが、夜に近くなると周囲も静か。そこで楽器を弾くと、どうしても際立って聴こえてしまうといいます。

そこで注目されているのが「防音室」です。自宅で、ご近所に気兼ねなく練習したいという要望から、ユニットから、部屋をまるごと施工するタイプまで種類は様ざま。価格帯も広く、ユニット型は1畳程度で60万円前後~、大きさや仕様によっては200万円を超える製品もあります。部屋丸ごとの自由設計は、建物の種類(一戸建て・集合住宅など)、使用楽器、利用時間などの条件に応じて変わりますが、たとえばアコースティックギター用、一戸建て、四畳半のプランで、おおよそ350万円かかるようです。

防音室は、リモートワークやオンライン会議、オンライン授業にも利用できるということで、新型コロナウイルスの感染が続く限り、今後も需要が増えていくと思われます。