そのまんま「サスティナブル」? イギリスの住宅事情







次世代の建築や家作りのキーワードとなっている「サスティナブル」ですが、国や地域によっては、注目される以前から、この考えに通じる取り組みが行われていたようです。ただ、これらは「サスティナブル」ありきで始められたわけではありません。その国の文化や風土、価値観、考え方などから生まれ、やがて根付いたものだと思われます。

中でも興味深いのは、イギリスの住宅事情です。




イギリスでは、売買される中古物件が新築物件より格段に多く、「築浅ではなく中古」「築100年以上」といった住宅が人気で、物件の価格も新築より中古の方が高く設定されています。これは、「(リフォームやリノベーションなどを施し、)建物は長く大切に使う」というサスティナブル住宅の考えに合致しているといえるでしょう。

ただ、イギリスの人びとが中古物件に魅かれる理由は、これだけではないようです。




ということで、今回はイギリスの中古物件にスポットを当ててみようと思います。



「築100年なんて珍しくない?」イギリスの中古物件



日本において中古物件を借りる、購入する時、「築年数」は大きなチェックポイントです。可能な限り、築浅物件に住みたいと思う人がほとんどだと思われます。一方、これがイギリスだと、築年数にはこだわりません。逆に「古ければ古い方がいい」という購入(賃貸)希望者も多く、築100年以上の物件に高値がついていたりします。

イギリスに年季の入った物件が多く、購入者に好まれているのには、いくつかの理由があります。

・家の寿命が長く、評価価値が下がりにくい:イギリスの家の寿命は約80年。これに対し、アメリカは約60年、なんと日本は約30年。日本では建て替え時期(評価価値が大きく下がる)となる築30年だが、イギリスでは、寿命の半分にも満たない。家は長く使うのが当たり前、新築(建て替えなども含む)する必要も少ないため、当然、中古市場が活発となる。

・耐火性・耐久性の高いレンガや石造りの家が多く、都市を形成している:1666年の「ロンドン大火災」において、ロンドン市内の約85%(約1万3200戸)の家屋が焼失。その原因は木造建築だとされ、翌年議会で「再建法」が成立すると、石造り・レンガ造りの家屋以外は禁止となる(ちなみに大火をきっかけに、世界初の「火災保険」が登場する)。石やレンガは耐火性・耐久性に優れているため、100年、200年単位で住むことのできる家屋が定着したと考えられる。

・保善や修繕、リフォームが充実:電気の配線を新しくする、壊れた場所を修復するなど、中古物件を住みやすい状態に保ち続けることが、ごく一般的に行われている。

・イギリスでは、景観や環境を守るための建築制限が厳しい:建物の色、使用する素材などが決められ、外観の変更も難しく、道路も例外ではない。そのため、100年前の景観をそのまま伝えている街並みも多い

・専門の修復職人がいる:歴史的な街並みや建築物を守るため、復元専門会社、石材の加工屋といった職人が、ひび割れや破損部分の修復・交換、汚れを洗浄するなどのメンテナンスを行っている。

・景観法による高さ規制:1930年代(1938年)から、ロンドンを象徴する建築物、たとえば「セントポール大聖堂(St. Paul’s Cathedral)」などを、いろいろな場所から眺められるよう、対象物と眺望点の高さ規制が行われている……ほか


「家は長く使う」という文化風土、地震や台風がほとんど発生せず(地域による)、建物の倒壊被害が少ない土地柄も手伝って、イギリスには良質の中古物件が出回り、築年数にかかわらず、今も現役で利用されているといえます。




映画『ハリーポッター』で上質なイギリス家屋の雰囲気を



新しければ新しいほど、価値の高い日本の中古住宅とは異なり、先述の通り、イギリスでは、物件の価格が築年数に左右されることはありません。

逆に19世紀以前に建てられた家屋などは「歴史的価値がある」ということで、価格も高く設定されています。
たとえば、洗練された優美で繊細な「ジョージアン様式(18世紀~19世紀半ば。

ジョージ1世から4世までの時代)」の建築や家具、「ヴィクトリア王朝(ビクトリアとも。1837年~1901年)」時代の暖炉といったインテリアが残っている物件などは当然人気です。

「ジョージアン様式」「ヴィクトリア(ビクトリア)様式」をはじめ、イギリスの古い建物や家具、インテリアといわれても、日本人にはなかなかイメージしにくいかもしません。

そこでおすすめなのが、魔法使いの少年の成長を描いた原作を映画した『ハリーポッター』シリーズです。

映画のロケ地として、「ボウドリアン図書館(オックスフォード大学)」「ダラム大聖堂(ダラム州ダラム市にあり、世界遺産指定)」「ロイヤル・コノート・パーク(ハートフォードシャー)」などが使われており、古き良きイギリスの雰囲気を醸し出しています。

なお、関西の有名テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ。大阪府大阪市)」には、ハリーポッターの「魔法ワールド」を再現した「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」があり、中世~近世のイギリスの街並みを楽しむことができます(新型コロナウイルスにより、休業する場合もあるので、営業については要確認)。

また、遊園地「としまえん」の跡地には、2023年、「スタジオツアー東京‐メイキングオブハリー・ポッター」がオープン予定。映画で使用された本物の衣装や小道具、セットを展示するとのことですから、ハリーポッターを通して、イギリスのサスティナブルを体感できるかもしれませんね。