マンションの避難設備



前回に引き続き、マンションに住む際の基礎的事項を取り上げます。今回のテーマはマンションの避難設備です。



普段は気に留めなくても…


現在マンションにお住まいであるかどうかにかかわらず、またオフィスビルや商業施設などの建物などでも人型のマークの入った緑の誘導灯を見たことがあるかと思います。いつもは見過ごしがちかもしれませんが、こうしたマークは万が一の時に人々が認識しやすい色やデザインが用いられています。また建物の構造面でも、一つの避難経路が塞がれても他の経路から逃げられるよう、二方向以上の異なった避難経路を確保することが法律で定められているなど、普段何気なく居住や使用している建物には緊急の際のための設備が施されています。これからマンションを購入する方だけでなく、現在居住されている方も今一度お近くの避難設備をチェックして、万が一の時に備えるようにしてください。それでは主だった設備を見てみましょう。



誘導灯


よく目にする人型のマークが入った緑の誘導灯。これには線色の地に白文字の「避難口誘導灯」と白色の地に緑文字の灯火の「通路誘導灯」の2種類があります。「避難口誘導灯」は屋内から外に通じる非常口の場所を示すもので、「通路誘導灯」は廊下や通路に設置して非常口までの方向を示します。2種類とも停電で電力が供給されなくなっても20分以上点灯できるよう蓄電池が内蔵されています。このため暗い室内でも屋外に避難する方向が分かるようになっています。
ところでなぜ非常口のマークは緑色なのでしょうか?それは火災時に、赤色の炎に対して緑が最も認識しやすい色だからです。
誘導灯は常時点灯しています。器具本体の交換日安は8~10年、蓄電池の寿命は4~6年といわれていますが、使用状況により異なります。もし消灯していると非常時に誘導灯の役割を発揮できませんので、誘導灯が点滅していたら、早急にランプを交換しましょう



非常用照明


紐がぶら下がった照明器具をマンションの廊下や階段などで見かけることがあると思いますが、あの白熱灯や蛍光灯の形をした照明器具が非常用照明です。停電時に点灯し避難通路の明るさを確保するものです。こちらも多くはバッテリーが内蔵され、停電しても30分以上点灯できる機能を備えています。この非常用照明だけで床面の水平面照度が1ルクス(蛍光灯器具の場合は2ルクス)以上確保できるように配置しなければならないと定められています。なお、器具自体は主要部分が難燃材料で作られているため、燃焼しにくくなっています。



避難器具


避難器具は、避難はしご、緩降機、すべり台、すべり棒、避難橋、避難用タラップ、救助袋、避難ロープの8種類に分類されます。マンションではベランダの床に設置されている避難ハッチと呼ばれる避難はしごがポピュラーです。ハッチを開けると、折りたたまれた避難用のはしごが収納され、使用時に階下に垂らすように広げて避難します。避難ハッチはすべてのベランダに設置されるわけではなく、一番端にある住戸のベランダに設置されているケースが多いです。避難時には隣家のベランダとの境界に設置されている隔て板を蹴破って避難ハッチのある所にたどり着くようになっています。
前回のこのコラムで触れたように、ベランダやバルコニーは分譲マンションであってもその部屋の所有者の専有部分ではなく、その一棟の区分所有者全員の共用部分であるのはここに関連します。そのため、ベランダやバルコニーの隔て板の前に荷物を置いてはいけません。隔て板の前に物が置いてあると避難経路を塞いでしまい、避難ができず逃げ遅れてしまいますので、絶対に物を置かないようにしましょう。また、避難ハッチの上に物やウッドデッキを置くのも厳禁です。
なお、万一足を踏み外した場合に一番下まで落下し続けることを防ぐため、避難ハッチは上下階で位置をずらして設置されています。こうした避難器具の設置が「2階以上の階または地階で、収容人員が30人以上」、または「3階以上のうち避難階または地上直通階段が1つのみの階で収容人員が10人以上」の共同住宅には、消防法で義務付けられています。



スプリンクラー


11階以上の共同住宅には、消防法で住戸内にスプリンクラー設備の設置が義務づけられています。消防法では高さ31mを超える建築物を「高層建築物」と定義されており、これは建物階数でいうと11階建て以上の建物に相当するため、「11階以上はスプリンクラー」ということになります。ただし、2方向の避難路を有する開放廊下型マンションで、11階以上の部屋の壁・天井が準不燃材以上の内装制限を施している場合には全階でスプリンクラーの設置が免除されています。また、開放廊下型マンションで11階以上の部屋の壁・天井を準不燃材以上の内装制限を施している場合には、11階~14階まではスプリンクラーの設置が免除されています。なお、平成8年以前建設のマンションでは、スプリンクラーが設置されていないマンションもあります。


普段は注意を払うことの少ない避難設備も、このように目立たないところでさまざまな工夫がなされていることにお気づきになるかと思います。もちろん、災害が起こらずこうした設備が実際に使用される必要がないことが最良なのですが、昨今のさまざま災害を機に、今一度身のまわりの設備に目を向け、万が一の際は慌てずに対処できるよう、心がけておきましょう。 






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